国内需要が縮小傾向にある日本酒産業。追い打ちをかけるようにコロナ禍によって、多くの酒蔵が苦境にあえいでいる。そんな中、ひと筋の光明として、日本酒業界から期待が集まるのがアジア市場だ。国内とは一転、中国本土、香港、シンガポール等の中華圏の富裕層を中心に高価格帯の日本酒の需要が高まっているのだ。昨年は香港が初めてアメリカからを抜いて輸出額首位となり、2位の中国本土は10年前と比較して1600%という驚異的な伸び率を見せている。
日本酒を愛するアジアのミレニアルズ富裕層に向け、ギフト需要に特化して誕生したのが高級日本酒「緲(びょう)」。開発したのは本社を香港に置くマーケティング会社のUNITY ZEROだ。日本を代表する雪国の雄大な自然と、製造パートナー「柏露酒造」のルーツである長岡藩主の酒蔵の歴史に思いを馳せるイメージから命名。原料には、世界最高ブランド米「越後長岡コシヒカリ」を使用して28%にまで磨き上げ、南北朝時代の武将が傷を癒したとされる高龍神社の雪解け伏流水と合わせてじっくりと仕上げた。ボトルには重要無形文化財に指定されている“肥前びーどろ”手吹きガラスを採用。江戸時代末期に高級品として珍重された江戸硝子の徳利をモチーフに、当時の形状を熟練職人が一つひとつ手吹きで再現。1本720mlで5万5,000円と、世界水準の高級酒として発売される。
さらに、独自開発したECで、中国国内からのオンライン購入と同時に贈答したい海外の送り先に対して、日本から輸出する仕組みを構築。中国国内輸入の需要だけでなく海外への贈答需要を満たすことで、規制に影響されない提供スキームを実現した。海を渡り、新たな市場を開拓する日本酒「緲(びょう)」が、日本文化の価値を高め、日本酒の魅力を世界に広がっていくことに期待したい。