4月下旬から東京都心などで本格始動した電動キックボードのシェアリングサービス。スマートフォンアプリを使って乗り降りの手続きや支払いを行い、エリア内各地に設置された拠点間を自由に移動できる。警察庁の特例措置を受けた実証実験の位置付けで、移動利便性の向上や人口減少課題解決への貢献が期待される一方で、サービスやモビリティ自体の安全性、普及が今後の焦点だ。
サービスは、国内4社でつくる業界団体が政府に働きかけて実現した。4社のうち、「Luup(ループ)」(東京・岡井大輝CEO)は渋谷区、新宿区、品川区、世田谷区、港区、目黒区の6区内で自社の電動キックボードを設置している。同社は昨年5月からすでに電動アシスト自転車を使った同様のサービスを手掛けており、そこに今回、電動キックボードを追加した格好だ。
現状では、この6区で合計約300箇所の「ポート」と呼ばれる無人の乗り降り拠点を、飲食店やコンビニエンスストア、オフィスなどの敷地内に設けた。キックボードは約100台を稼働させている。ポートの設置箇所、キックボードの台数ともに順次増やしていくという。
初乗り10分110円。運転はシンプルで簡単
安全性を考慮し、キックボードの最高速度は15kmに制限される。自転車レーン(普通自転車専用通行帯)や自転車道、車道左側などを走行でき、歩道や車の交通量が多い一部道路は禁止ゾーンとされ、押し歩きをする必要がある。料金は最初10分間110円、以降は1分ごとに16.5円だ。
キックボードに記載されたQRコードをスマートフォンの専用アプリで読み込んで運転を開始。乗り方としては、まず足で地面を蹴って1〜2kmの初速をつけてからゆっくりとアクセルボタンを押して加速し、ブレーキやウインカーなどを使いながら交通標識に沿って走行する。指定した目的地のポートに到着後、駐車したキックボードをスマホで撮影、決済をして終了となる。一連の手続きや支払いのほか、走行方法、ルート案内といった情報もアプリ内で確認できる。
電動キックボードは本来、「原動機付き自転車(原付き)」に分類されるが、今回の実証実験では「小型特殊自動車」とされ、衛生面などからシェアサービスの課題になっていたヘルメットの使用は任意となった。自動車であるため普通運転免許が必要で、アプリ登録時には走行ルールの確認テストでの合格も条件だ。
2023年までに全国展開へ。街中を“駅前化”する
同社では、約半年間の実証実験を経て、課題をクリアした上で、2023年までに全国展開を目指す。また、高齢者らが運転しやすいように、車輪の数を増やしたり、椅子が設置するなど、さらに新しい電動小型モビリティの開発も進めていく方針だ。
実証実験の開始後、電動アシスト自転車と比較して多くの利用があるという同社のキックボードのシェアサービス。業界団体の代表も務める岡井CEOは未来を展望し、こうコメントしている。
「今後さらにポートの密度を高めていくとともに、誰でも簡単に乗れるモビリティーを開発していきます。人口減少時代では、CtoC(個人間取引)のマッチングサービスや配達系サービスの増加が見込まれ、カギになるのは既存の交通手段とは異なる、柔軟性を持った新しい交通インフラです。電動キックボードなどの小型モビリティの普及が人手不足や高齢化などの課題解決に貢献できると考えています。街中を“駅前化”するような交通インフラを作り、駅から離れているマンションでもポートがあれば不動産価値が上がるといった現象を起こしたい」