人気ブランドから個性派、博物館級のアンティークまで揃い踏み! "世界一"に輝く渋谷の「グローブスペックス」がリニューアルオープン

  • 文:高橋一史
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2021年4月12日に移転オープンした、グローブスペックス渋谷店。写真は3階に新設された、クラシカルなメガネ売り場とサロンを併設するグローブスペックス・オーク・ルームの入り口。Photo by Suguru Saito

「ニッポンに世界一のメガネ店がある」

そう語られるようになったのは2017年のこと。同年にイタリアで開催された世界最大規模のメガネ展示会「MIDO(ミド)」にて、グランプリに該当する「Bestore Award(ベストア・アワード)」をグローブスペックス代官山店が受賞。翌年の18年には渋谷店が同賞に輝き、2年連続でその名が世界に轟いた。店のデザイン、品揃え、確かな技術といった総合力が認められた結果だ。

世界一の店をつくることは、ニッポンのメガネ業界で知らぬ者はいない同店代表の岡田哲哉さんにとっても長年の悲願だった。東京・渋谷に1号店をオープンさせたのが23年前の1998年。まだファッションとしてのメガネの地位が低かった時代である。岡田さんは各国のハイセンスなメガネを仕入れ、海外に匹敵するマーケットをニッポンに生み出すべく奔走してきた。スティーブ・ジョブズが愛用したことでも名高いドイツのルノアのエージェントも務め、メガネの価値を高めてきた。

そしてこのたび、グローブスペックス渋谷店が建物の老朽化に伴い2021年4月に移転オープン。立地は北谷公園のすぐ横、旧店の隣のビルだ。実はここは1号店がスタートした場所。出発点に立ち返り、博物館レベルのコレクターズアイテムを扱う特別フロアも設け、新章へとスタートを切った。

フロアは1階と3階に分かれ、2階は他店である。1階は以前と同様、おもにモダンなブランドのセレクト。アメリカのアーレム、フランスのタリアンやザビエル・デローム、ベルギーのミシェル・エノー、ニッポンのマサヒロ・マルヤマといった小さなブランドから、フランスのアン・バレンタイン、ドイツのルノアやマイキータ、イギリスのオリバー・ゴールドスミス、デンマークのリンドバーグといった有名どころまで。アメリカのラ・ループのネックレス型メガネホルダーも揃う。セレクトの基準は岡田さんがいいと感じたもので、マイナー、メジャーの区別なく、一本筋の通ったブランドだけがグローブスペックスの一員として取り入れられている。

1階フロアの8割に旧店からのヴィンテージ什器を用いながらも、新たな世界観が生まれている。フロア面積がコンパクトになり自然光が差し込み、見やすく開放的になった。Photo by Suguru Saito

手前右側は、ネイティブ・サンズ。ファッションブランドのネイバーフッドが関わるニッポンブランドだ。左側は人気急上昇中の、古きよき時代を現代に蘇らせたジュリアス・タート・オプティカル。Photo by Suguru Saito

すべてグローブスペックスが企画・製造したメガネで、右側はファッションブランドのオールドジョーと、中央はサイとコラボしたモデル。左端2本はアメリカのショップ「セルフエッジ」とのコラボであるコズメルだ。Photo by Suguru Saito

3階フロアは世界最古のものを含むレンズメーター(レンズの度数測定器)群やフレーム製造マシンも飾られたミュージアム的空間。手前のガラスケースの中にはアンティークやヴィンテージ、中央のテーブルにはレスカ・ルネティエやゲルノット・リンドナーが並ぶ。Photo by Suguru Saito

代表の岡田さんも対応する、新たなサロンスペース

岡田哲哉(おかだ・てつや)●1959年、広島県生まれ。グローブスペックス代表。岡田さんにメガネの見立てや視力チェックを相談するなら、電話やメールで予約しておきたい。Photo by Suguru Saito

3階が新設された「グローブスペックス・オーク・ルーム(GLOBE SPECS OAK ROOM)」。サロン+博物館+希少品販売といった部屋で、ルノアの設立者であるゲルノット・リンドナーの名を冠したスターリング・シルバー製のコレクション、グローブスペックスが昔から取り扱うバッファローホーン(水牛の角)のフレーム、フランスの歴史あるレスカ ルネティエらのクラシカルな本物志向の品々が置かれている。

なかでも注目は岡田さんをして、「超ド級。いままで扱ったことがないレベルの稀少性」と言わしめる1910〜30年代のアンティークフレーム。アメリカのレトロスペック社がザ・スペクタクルの名で展開したアンティークやヴィンテージの中でも、最高峰のものが厳選されている。価格は金張りのメタルフレームが¥700,000~1300,000ほど、プラスチックフレームが¥110,000~200,000ほど。メガネをパーツ分解して保管し、メンテナンス後に組み立て直した製品なので見た目は新品そのもの。加工技術の限界に挑んだ当時の職人技を堪能できるコレクションである。

グローブスペックスに何度か足を運んだことのある人は、店内で岡田さんの姿を見かけたことがあるだろう。エージェント業務、オリジナルアイテム企画、海外出張もこなしながら岡田さんは現場主義を貫く。「目の悩みを解決したい」という思いから、他店にはない高度な視力チェックを自ら行い、最適な補正レンズを客に提供する。「流行よりも、その人らしさが大切だから」と、さまざまなジャンルのフレームを並べる。こうしたメガネ文化を大切にする姿勢こそが、グローブスペックスを世界一たらしめる所以だ。出発の地に戻り、さらにパワーアップした温故知新な新店の誕生を祝いたい。

岡田さんのデスクの向かい側はアポイントメント制のサロン。奥の棚には70年代ウッドストックや80年代ヒップホップの本、スタイル・カウンシルのレコードジャケットなどが飾られ、どれも岡田さんの趣味の世界だ。Photo by Suguru Saito

アンティークやヴィンテージの特別なコレクション。鼻あて(ノーズパッド)がない10年代、鼻あてが発明された20年代、ベイクライトの鼻あてが開発された30年代といった歴史的なメガネを実際に入手できる。Photo by Suguru Saito

岡田さんが「ニッポンにたとえると、べっ甲に相当する美しい天然素材」と語るバッファローホーンのメガネ。ブランドはオーストリアのハートマン、ロサンゼルスのザ・スペクタクル、ニューヨークのバード&ケイジなど多様だ。Photo by Suguru Saito

路地に面した1階と外階段で上がる3階が、移転オープンした渋谷店。写真右端の木製の建物は、初の公園内出店で話題のブルーボトルコーヒーだ。Photo by Suguru Saito

グローブスペックス渋谷店

東京都渋谷区神南1-7-5 アンドスビル 1・3F
TEL:03-5459-8377
営業時間:12時〜18時(時短営業)
不定休
www.globespecs.co.jp

※営業日時・内容などが変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。