京都で相次ぐホテルオープンのニュース。今回は、4月20日開業のホテル「hotel tou nishinotoin kyoto by withceed」に宿泊。空間デザイン監修は谷尻誠さんと吉田愛さん率いるサポーズ デザイン オフィスで、「奥」をコンセプトにしたホテルと聞いて期待が高まる。
ロケーションは京都駅から徒歩圏内。西本願寺と東本願寺に挟まれ、仏具店が軒を連ねる昔ながらの風情が残るエリア。ホテルに到着したら、入り口の自動ドアの向こうに1本の小路が。壁も天井も銅板に囲まれ、視線の先には1本の松の木。歩を進めると、小路の突き当たりの左右の自動ドアが開き、右手がロビー、左手がカフェ&バーに。ロビーは細い小路から一転、ゆったりとした空間が広がっている。なるほど、通りに面した入り口すぐにロビーを設けず、通路をつくることで、奥へ奥へと誘われるようなアプローチ。早速「奥」を感じさせるデザインだ。京町家をイメージして館内全体をあえて天井は低く、照明は暗めに設定しているそうで、ロビーや廊下などもどこか秘密っぽいような親密なような雰囲気を醸し出している。
泊まったのは「トウ プレミアムツイン」。ツインベッドのほか、畳フロアの広い小上がり付きで定員5名の部屋だ。黒やグレーを基調にコッパーのアクセントを効かせた内装に、障子や畳といった和の要素が調和したシンプルモダンな空間。タオルやアメニティ、ミニバーなどすべて戸棚や引き出しにしまってあるので、いかにもなホテル感がなく、ゆったりと寛げる。枕は低反発と羽毛の2種類が用意されていたり、フットマッサージ機があったりと、心地よく過ごすためのさりげない心配りがありがたい。テレビの館内施設案内で、大浴場や朝食の混み具合をチェックできるのも、いまの時代に嬉しい機能だ。
部屋にはシャワールームだけだったが、地下1階の大浴場に入って大満足。大きな湯船に身を浸せば日常の疲れがゆるゆると溶けていくよう。やはり黒ベースの空間でほの暗く、洞窟の中にいるような心地にもなる。
京都の奥深さや奥行きをクリエイターたちが表現。
ロビーに併設されたライブラリーは、ブックディレクター幅允孝さん率いるバッハが、ホテルのコンセプト「奥」を再編集して選書。「京都の奥を知る」「余白の美」など5つのテーマのもと、美術書から小説、エッセイ、ガイドブックまで幅広く揃う。京都好きなら心に響くこと間違いなしのラインナップで、日がな一日、ライブラリー前のソファで読書に耽りたくなるほどだ。部屋に持ち込むことはできないが、カフェ&バーのドリンクとともにソファで閲覧したり、カフェ&バーに持ち込むことはできる。
朝食はカフェ&バーで。京の米老舗、八代目儀兵衛の米を使ったお粥にサバの西京焼きや出汁巻き卵などを合わせた和食と、クロワッサンやフィセル、ハムとスクランブルエッグ、ヨーグルトをセットにした洋食の2種類。特にお粥は米の旨みや甘みを強く感じるおいしさだった。フリードリンクとして、一保堂茶舗のいり番茶や、京都初上陸のニュージーランド発スペシャルティコーヒーロースター、オールプレス・エスプレッソのコーヒーが用意されているのが贅沢。テイクアップ用カップもあるので、部屋でゆっくり楽しんだり、街歩きに持参も可能だ。
カフェ&バーは朝食を含め、ウォークインの利用が可能。日本茶は一保堂茶舗、コーヒー系はオールプレス・エスプレッソで、両方を使った抹茶ラテや抹茶ミルクはここだけのフレイバーとなる。
ロビーや庭、大浴場、カフェ&バーなど、館内のあちこちに大きな岩が置かれている。ゲストを迎えるための「迎石」であり、洞穴を抜けた先にある空間をイメージさせるためのものだとか。手がけているのは作庭家、橋本善次郎さんが率いるランドスケープ ニワタン デザイン+アルチザン オフィス。
ほかにもブランディングとグラフィックデザインは川上シュンさんが代表のアートレス、ロビーの円盤の大テーブルや各部屋のアートワークは京都・綾部の和紙職人、ハタノワタルさん、前述のカフェ&バーはフードディレクターの浅本充さん率いるユニテ、と多彩なクリエイターが参画し、「奥」の世界を表現している。
食やアート、ライブラリーから感じさせる京都のほか、光や影、余白、艶をデザインした空間から京都の奥深さを香り立たせるようなホテル。しっとりと情緒ある滞在となった。現在、宿泊料は夏までのオープニングプライスで50%オフとのこと。京都を訪れる際にはぜひ試してみてほしい。
hotel tou nishinotoin kyoto by withceed
ホテル トウ 西洞院 京都 バイ ウイズシード
京都府京都市下京区西洞院通花屋町下ル西洞院町455
TEL:075-744-0144
全121室、1室料金¥10,000〜(税込)、朝食¥2,200(税込)
チェックイン15時、チェックアウト11時
www.hotel-tou.com