【Penが選んだ、今月の音楽】
コロナ疲れで癒されたい欲求が高まっているせいかもしれないが、まずジャケット写真に目を奪われてしまった。なんてナチュラルでオーガニックなポートレートなんだろう。個人的には、ひとりぼっちというのが、またいい。きっと、写真のイメージそのままの音と歌を聴かせてくれる作品なのだろうと、想像が膨らむ。なんせ相手は、最近ではハイムの全英1位のアルバム『ウーマン・イン・ミュージック パートⅢ』など、良質なポップ/ロック作品を数多く手がける、ロスタム・バトマングリその人なのだから。
ヴァンパイア・ウィークエンド脱退翌年の2017年以来となる、ソロ2作目のニュー・アルバム。実際にリモート中心に制作されたのかどうかは未確認だが、“変化への恐怖”を意味する『チェンジフォビア』というタイトルが、自身も感染した新型コロナウイルスや、ブラック・ライブズ・マター、あるいは環境問題など、近年の世界事情がインスピレーション源になったことを物語っている気がする。
この原稿を書いている時点では、アルバム発売に先駆けて3曲の音源が届いている。ダウンテンポのジャジーなトラックと、たゆたうようなボーカルに、テナー・サックスが絶妙に絡む「アンフォールド・ユー」。澄み切った音色のメロディックなギター・サウンドに、胸を高鳴らせずにはいられない「ジーズ・キッズ・ウィ・ニュー」。躍動感のあるビートと、やわらかいポップなメロディが融合した「4ランナー」。どれもが新しくも懐かしい、ロスタム・マジックとも呼べる美しさを放ち、とにかく心地よい。
アルバム全体を語るのは早計かもしれない。しかし、『チェンジフォビア』がモノクロームな心の風景に、優しく彩りを加えてくれることは間違いなさそうだ。ひとり空を見上げながら、聴いてみるとしよう。