新型「GR 86」を世界初披露! トヨタはなぜ、スポーツカーをつくり続けるのか?

  • 写真:GR
  • 文:サトータケシ
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「86」としては2代目にあたる。スバルBRZとはバンパー形状などディテールのデザインなども異なる。

2021年4月5日、トヨタ自動車は新型スポーツカー「GR 86」を発表した。GRとはトヨタのモータースポーツ活動を担当するGAZOO Racingに由来するスポーツカーブランドで、「GR 86」は「GRスープラ」「GRヤリス」に続く第3弾。近年のトヨタが、スポーツカーに力を入れていることがわかる。

 

では、なぜトヨタはスポーツカーに注力するのか。率直に言って、開発に手間がかかる割には販売台数が期待できないスポーツカーは、経営的に考えるとうまみが少ない。

けれどもトヨタは、「道が人を鍛え、クルマを鍛える」という考え方でクルマを開発している。世界中の過酷な状況でクルマを走らせることで得た経験や技術が、いいクルマづくり、走らせて楽しいクルマづくりにつながるという考えだ。

 

そこでラリーやレースに参戦して極限の状況で走らせ、その知見をもとにスポーツカーをつくる。そしてこのノウハウを、さまざまな車種に水平展開する。つまりスポーツカーを真剣に開発するということは、トヨタのラインアップのすべてのパフォーマンスを底上げすることにつながるのだ。同時に、ミニバンからSUVまで、多くの車種にファン・トゥ・ドライブを伝播することになる。

スポーツカーらしい流麗なフォルムのサイドライン。スポーツカーらしいデザインのハイライトでもある。

スバルが開発した水平対向4気筒エンジン。排気量は先代の2ℓから2.4ℓになり、出力は235psになった。

今回の「GR 86」は2代目で、初代と同じくスバルとの共同開発。スバルには、「スバルBRZ」という兄弟車がいる。

なぜ共同で開発するのかといえば、前述したようにスポーツカーの開発はコスト的に厳しいからだ。そこで2社で力を合わせれば、より多くの方に手の届く価格でスポーツカーを提供できるし、クルマ文化の継承にもつながる。

 新しい「GR 86」のエンジンは、2.4ℓ水平対向4気筒で、最高出力は235ps、0-100km/h加速は従来型より1.1秒早い6.3秒だとされる。けれども楽しみなのは速さではなく、味だ。

水平対向エンジンは、垂直にピストンが運動する直列エンジンと異なり、パンチを打ち合うボクサーのように水平にピストンが動く。この時、向かい合う左右のピストンが互いの慣性を打ち消すため、滑らかな回転フィールになる。また、直列エンジンに比べて重心が低くなるというメリットもある。

いいとこだらけの水平対抗エンジンであるけれど、製造やオイル管理に高度なノウハウが必要になるため、量産するのは世界を探してもスバルとポルシェだけだ。

 このように希少で高度な技術を用いたスポーツカーが、おそらく手の届く価格で発表される。わくわくしながら、秋の販売開始を待ちたい。

6速マニュアルが用意されるのもスポーツカー好きにはたまらないポイント。着座位置も低く、乗る人をスポーツカー独自の世界に誘う。

スープラ、ヤリスに続く、GRブランド第三弾。右の86のロゴは先代から使われるデザインモチーフ。

GR 86

●サイズ(全長×全幅×全高):4265×1775×1310mm
●エンジン形式:水平対向4気筒DOHC
●排気量:2387cc
●最高出力:235PS/ 7000rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6段MT、6段AT
●車両価格:未定