1970年代〜80年代発のシティポップが再評価される昨今。その流れを紡ぎ、2010年代以降の風景を鮮やかに描く新世代をピックアップ。全3回にわたって紹介する。
cero ──時代の輝きを鮮やかに切り取り、シティポップ・シーンを牽引
メンバーそれぞれが作曲やアレンジ、プロデュースを手がけ、ヒップホップからトライバル・ビートまで、楽曲ごとに異なる音色や風景を描く。固定された音楽世界を持たないバンドがセロだ。時代の先端にある輝きを切り取ったような音をつくり続ける彼ら。
2015年に発表したアルバム『Obscure Ride』では、メロディアスなブラック・ミュージックの要素を取り入れ、見慣れた景色を色鮮やかに変える完成度の高いグルーヴを表現。この作品をきっかけに、現代のシティポップが注目されるようになったともいわれている。
しかし彼らはその世界に固執することなく、軽やかにサウンドを進化させ、新たな時代の音を生み出し続ける。
SIRUP ──歌とラップを自由に生き交い、現代の都市がはらむ空気を表現
歌(シング)とラップを自由に行き交うボーカル・スタイルから名付けられたというアーティスト、シラップ。
新進気鋭のクリエイターたちと繰り広げるサウンドは、ソウルやヒップホップ、エレクトロなど多様性にあふれたもの。さまざまな感性や嗜好が認められる現代の都市だからこそ生み出せる空気感を、楽曲に閉じ込めている。
その根底には人々の心の動きに寄り添うメロディーがちりばめられており、実験性とポップ性との融和が1980年代の楽曲スタイルにも通じる。
Nulbarich ──ブラック・ミュージックを軸に、東京の輝きをメロディアスに歌う
生楽器、もしくはそれらをサンプリングしたサウンドを駆使。中心人物であるJQの日本語と英語を流麗にミックスさせたボーカルで、洋邦問わず幅広いリスナーから支持されるバンドが、ナルバリッチ。
ブラック・ミュージックをベースにしながら口ずさみやすいメロディーを加え、現在の東京がもつ輝きを表現する楽曲が多い。「なにもないけど満たされる」という意のバンド名が示す通り、聴くものを豊かな気分にさせる。