僕が高校時代にカバーした音源を、褒めてくださって。 ──佐野史郎が明かす、大滝詠一の知られざるエピソード

  • 写真(静物):青野 豊
  • 文:澤田真幸
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佐野史郎●俳優。1955年、島根県出身。86年『夢みるように眠りたい』で映画主演デビュー。以後、数々の映画やドラマ、舞台で幅広く活躍している。小泉八雲の朗読を続けている他、写真、執筆、バンドなど俳優以外の活動も行っている。

高校生だった1970年に、はっぴいえんどの「12月の雨の日」を聴いて衝撃を受けて以来、いまに至るまで熱心な大滝詠一ファンであり続けている佐野史郎。93年にラジオ番組で初めて対面した時は、高校時代にカバーしたはっぴいえんどの「春よ来い」のカセット音源を持参。大滝本人に聴いてもらったことがあると明かす。

「ずっとファンで居続けたんだという想いを伝えたい一心でした。いま考えると怖いもの知らずですが、当時はとにかくわかってくださいという気持ちを抑えられなかったということですね。リップサービスでしょうが『鈴木慶一よりうまい』って言ってくださいました(笑)」

これを機に交流が始まり、年に1回は会う間柄に。

大滝詠一ファンクラブのグリーティングカードと、76年に『ゴー! ゴー! ナイアガラ』で放送された「クレイジー・キャッツ特集(ゲスト:植木等)」をエアチェックしたカセットは宝物だという。

「お会いするとその時々に大滝さんが興味をもっていることが話題になるのですが、僕が俳優をしていることもあって、日本映画の話も多かったですね。とにかく研究熱心で、体系立てて分析されるので、こちらが中途半端な知識で口を挟もうものなら、徹底的に論破されました」

数ある想い出の中でも特に忘れられないのが、2009年にリリースされた、女性アーティストだけによる大滝詠一トリビュートアルバム『A LONG VACATION from Ladies』の記念コンサートで司会を務めたこと。

「曲やステージの構成などの演出にも加わらせていただいたのもうれしかったのですが、その後の打ち上げが最高でした。金子マリさんとか大貫妙子さんが大滝さんと一緒に居るわけですよ。大滝さんと金子さんがずっとルーツであるロックンロールの話なんかをしていて、それを横で聞いている時間は本当に幸せでした」


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