日本の調味料は、魚料理のためにあるのではと思うほど相性がいい。醤油・塩・酢でマグロがもっとおいしくなる方法を、「ウエカツ」さんが教えます。
【醤油洗い】浸透圧を知れば、3秒で身質と風味を格上げできる。
マグロのヅケは耳慣れたメニューだが、「醤油洗い」とはどういう調理法なのだろうか。ウエカツさんは言う。「醤油でマグロの刺し身を3秒間だけ洗い、ザルに広げて表面の水分を落とします。やることはこれだけですが、身の表層についた醤油の塩分に引き寄せられて中心からよけいな水分が外へと抜けていき、臭みのないもっちりとした肉質に変わります」。確かに、マグロの刺し身に醤油をつけるのとは舌触りも風味も別格だ。
【塩締め】赤身の味わいを引き立てる、優しい振り塩。
醤油洗いよりもすっきりとクリアな味わいが楽しめるのが、この「塩締め」だ。
「いちばん大事なポイントは、塩をすり込んだり揉み込んだりしないこと。魚の身はものすごくやわらかいから、なるべく細胞を傷つけないように、優しく纏わせる程度が理想です。5分程度置いて表面に水分が出てきたら、さっと流水で塩を落としてから、水気を取れば完成です」
塩締めしたマグロは、一度冷凍してから使う分だけ切って炒め物にしてもおいしいそうだ。
【酢締め】簡単にできて、見た目にも華やかな紅白のひと皿。
塩締めしたマグロをさらに酢で締めれば、もう一品、新しい味のマグロが完成する。
「これは締めサバと同じ原理です。今日お見せした3種類の調理法は、他のサバ科の魚にも応用できます。脂が少ない赤身には、塩も酢もさっと染み込ませる程度で大丈夫。使う魚の種類によって塩と酢の時間をアレンジしながら、自分好みのバランスを見つけてください」
切り身にして盛り付けると紅白の断面が美しく、食卓に華やかな彩りを添えてくれる。
こちらの記事は、2020年 Pen 1/15号「やっぱり、魚かな。」特集からの抜粋です。