「ウエカツ」さんに教わる、スーパーのマグロがもっとおいしくなる方法。

  • 写真:安達紗希子(CROSSOVER)
  • 文:佐野慎吾
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日本の調味料は、魚料理のためにあるのではと思うほど相性がいい。醤油・塩・酢でマグロがもっとおいしくなる方法を、「ウエカツ」さんが教えます。

上田勝彦●「ウエカツ水産」代表取締役。1964年、島根県生まれ。長崎大学水産学部在学中に漁師として活動。91年に水産庁入庁。資源管理課などを経て2015年に退職。「サカナ伝えて、国興す」を社是に、食卓と漁業の生産現場をつなぎ直す活動を展開。著書に『ウエカツの目からウロコの魚料理』(東京書籍)など。

「刺し身だからって、なんでもかんでも醤油とワサビが合うと思ったら大間違い」とウエカツさん。ねっとりと仕上がった醤油洗いには、和辛子とカイワレが最高のお伴だ。

【醤油洗い】浸透圧を知れば、3秒で身質と風味を格上げできる。

マグロのヅケは耳慣れたメニューだが、「醤油洗い」とはどういう調理法なのだろうか。ウエカツさんは言う。「醤油でマグロの刺し身を3秒間だけ洗い、ザルに広げて表面の水分を落とします。やることはこれだけですが、身の表層についた醤油の塩分に引き寄せられて中心からよけいな水分が外へと抜けていき、臭みのないもっちりとした肉質に変わります」。確かに、マグロの刺し身に醤油をつけるのとは舌触りも風味も別格だ。

「刺し身に醤油をつけて食べる組み合わせは同じでも、浸透圧をうまく利用するだけで、味がガラリと変わります」と、ウエカツさんは語る。

醤油でマグロを3秒洗うだけ。

【塩締め】赤身の味わいを引き立てる、優しい振り塩。

赤身の味わいをダイレクトに感じられる塩締めは、薬味を使わずにシンプルな盛り付けで。少し太めにした大根の千切りと一緒に食べると、すっきりクリアな味わいが強調される。

醤油洗いよりもすっきりとクリアな味わいが楽しめるのが、この「塩締め」だ。

「いちばん大事なポイントは、塩をすり込んだり揉み込んだりしないこと。魚の身はものすごくやわらかいから、なるべく細胞を傷つけないように、優しく纏わせる程度が理想です。5分程度置いて表面に水分が出てきたら、さっと流水で塩を落としてから、水気を取れば完成です」

塩締めしたマグロは、一度冷凍してから使う分だけ切って炒め物にしてもおいしいそうだ。

さっと水洗いして水気を切ったマグロのサクに塩を纏わせたら、しばらく放置(だいたい10~30分)。

最初は角張っていた塩の結晶がしだいに溶け始め、マグロの表面が汗をかいたようにジュクジュクしてきたら完成。塩をさっと流水で洗い流し、水気を取ったらペーパータオルに包む。置くほどに塩味が浸透するので好みに応じて時間調整を。

【酢締め】簡単にできて、見た目にも華やかな紅白のひと皿。

酢締めしたマグロの刺し身には、水にさらした玉ネギの薄切りを添えて、上から少しだけ一味唐辛子をふるといい。さっぱりとしているから、次から次へと口に運んでしまう。

塩締めしたマグロをさらに酢で締めれば、もう一品、新しい味のマグロが完成する。

「これは締めサバと同じ原理です。今日お見せした3種類の調理法は、他のサバ科の魚にも応用できます。脂が少ない赤身には、塩も酢もさっと染み込ませる程度で大丈夫。使う魚の種類によって塩と酢の時間をアレンジしながら、自分好みのバランスを見つけてください」

切り身にして盛り付けると紅白の断面が美しく、食卓に華やかな彩りを添えてくれる。

塩締めしたマグロのサクをバットの上に置き、底面が浸る程度まで酢を張る。

ぴったりとキッチンペーパーを被せて、そのまま5分程度、放置。ペーパーを取り外し、表面がうっすらと白くなっていれば出来上がり。酢締めで使った酢には魚の旨味が出ており、寿司酢に使うとおいしい酢飯に。

こちらの記事は、2020年 Pen 1/15号「やっぱり、魚かな。」特集からの抜粋です。