ジャンルを超えて生み出される「ニッポンの美酒」が、日本各地で次々と生まれている。各界で活躍する著名人に、ジャパンメイドのお酒のなかから、家呑みを楽しくする愛飲の1本を教えてもらった。
出合って以来、芋焼酎のおいしさに目覚め、家の“常備酒”に。
「ロケで鹿児島へ行った時、飲み屋のおばちゃんに薦められたのがこの八千代伝。あまりのおいしさに取り寄せて常備してます」という福田さん。それまでは麦焼酎一辺倒だったが、八千代伝を飲み始めてから芋焼酎のおいしさに目覚めたという。「昔の芋焼酎は芋臭さが鼻につくイメージだったけど、最近はすごく飲みやすくなった。この八千代伝もしっかりしているのに洗練されてる」。2018年農業法人に認定された鹿児島の八千代伝酒造は、原料のサツマイモや麦をすべて自社畑で栽培。品質管理を徹底して行っている。
「全部自分でつくっているのがすごい。決して手抜きしないぞって思い入れが感じられます」
家呑みのおつまみ本を出版したこともあり、料理もかなりな腕前の福田さん。「八千代伝は食中に飲むことも多いですよ。豚の角煮とか、南蛮漬けとかが合うんじゃない? この間もサバを唐揚げにして甘酢漬けにしたらうまかったね」
4年前に家庭をもち、子どもができてからは家呑みのスタイルも一変したという。「独身時代は好きな時に好きなだけ飲んでたけど、いまはそうはいかない。だから夜、ひとりで飲む時間がとても貴重に思える。ゆっくりリラックスしながら八千代伝をロックで楽しんでいます」
●八千代伝(黒)
八千代伝酒造 【鹿児島県】
11ヘクタールもの自社農園で栽培のサツマイモはデンプンを多く含み、コクとキレのある焼酎になる。黒麹仕込みはふくよかで芳醇な香りが特徴。料理との相性もいい。1800ml ¥2,530(税込)/八千代伝酒造 TEL:0994-32-0024
瓶内熟成した古酒は、伝説のシングルモルトに匹敵する個性派。
食の取材で国内外を飛び回る中村さんが、いま一番ハマっているのが石垣島・池原酒造の泡盛だ。「僕が習っている琉球音楽の師匠、宮城竹茂さんが教えてくれたのがきっかけです。琉球王朝では、外交の際に音楽と泡盛は欠かせないものだったそうです」。瓶内で熟成する泡盛は、古いものほど味わいがあるという。なかでも白百合は、アイラ島のシングルモルト、アードベッグに匹敵するほどクセが強く、一度飲んだら病み付きになると中村さん。「家で飲む時はロックで。しっかりした味なので、和・洋・中・エスニックとどんな料理にも合う。しっかり酔えて翌朝に残らないのもうれしいですね」
●白百合 古酒
池原酒造 【沖縄県】
石垣島の伝統的な手法でつくられる泡盛。甕で熟成された古酒は、より芳醇な香りと深いコクが楽しめる。720ml ¥2,700(税込)/池原酒造 TEL:0980-82-2230
日光の清らかな水が生んだ本格派ベルジャンビールは、アウトドアにもお薦め。
カジュアルイタリアンレストランLIFEのオーナーシェフ、相場さんは休日になると那須の山の家で家族とともに自然遊びを満喫する。キャンプやバーベキューのお供にクラフトビールを飲むことが多いそうだ。
「日光でつくられるこのビールは、クラフトビール特有のコクと日本の気候に合 った爽やかさのバランスが秀逸。ナチュラルな発泡で料理を邪魔しないのもいい」。山の家でのおつまみは地元で調達した食材が好相性。「バーベキューならマスの塩焼き、マスの燻製をゆで野菜に散らしたサラダも合いますよ」。おいしい空気と水が生んだ日本のクラフトビールは家呑みはもちろん、アウトドアにもお薦めだ。
●日光ベルジャンビール Un(ベルジャンブロンド)
日光ブルーイング 【栃木県】
奥日光の天然水と3種の麦芽、2種のホップをブレンドした本格派のベルジャンスタイル。330ml ¥420(税込) /日光ブルーイング TEL:0288-25-3631
つくり手のストーリーに思いを馳せるのが、クラフトビールの醍醐味。
2年前、青森のビール醸造所を取材したパックン。創業者のギャレス・バーンズさんの生き方とビールのおいしさに一目惚れした。「アメリカ空軍に入隊し三沢基地に配属されたあと、日本に魅せられ独学で青森にブルワリーをつくった。いまではホップまで生産しているそのチャレンジ精神が大好き。この物語をつまみにビールを味わうのが最高に楽しいんです」。クラフトビールは現地で飲むのがいちばんだそう。「注ぎたてのビールは口の中でふわーっと広がって、まるで生き物みたい。ホップの強い香りと苦味がしっかり感じられるのがいい」。つくり手に思いを馳せ、じっくり味わいたい。
●デビーズ ペールエール
ビー イージー ブルーイング 【青森県】
ホップの香りとほどよい苦味が際立つペールエール。第1号の商標は母の名前を付けた。1000ml ¥2,700(税込)/ビー イージー ブルーイング TEL:0172-78-1222
海外のジンに負けないインパクトの強さに、惚れ込んで。
クラフトジンのバーを経営し、ミュージシャンの顔ももつ朝葉さん。ジンは憧れのソウルシンガー、サム・クックが好んだ酒でもある。「日本のジンは外国のものと比べて繊細さが魅力だけど、いまいちパンチが弱い。アルケミエはインパクトも十分あるのでジン好きにはたまらないんです」。郡上八幡の小さな蒸留所でつくられるアルケミエは旬の果実や薬草を使って実験的な味わいを生み出している。「柚子や桃、梨、カカオと毎年どんな味ができるのか楽しみ。進化し続けるクラフトジンは大人の好奇心をくすぐります。爽やかなハーブの香りは場が華やぐので、ホームパーティにもお薦めです」
●アルケミエ(PEAR)
辰巳蒸留所 【岐阜県】
郡上八幡の小さな蒸留所でクラフトジンやアブサンを中心に生産。500ml ¥4,600(税込)/辰巳蒸留所 Facebookページ
この記事は、2020年 Pen 7/1号「ニッポンの美酒。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。