目利きが選んだ、“飲み切りサイズ”の身近な店で買える旨い日本酒5選。

  • 写真:長谷川 潤
  • 文:小松めぐみ
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日本酒を“家飲み”する人が増えた最近は、四合瓶やワンカップなど、家庭の冷蔵庫にも収まりやすい飲み切りサイズの日本酒が増え、値段も手頃で買いやすくなってきた。そこで、東京・恵比寿の人気日本酒バー「GEM by moto」の店主で、日本酒のエキスパートとして幅広く活躍する千葉麻里絵さんが、ちょっといいスーパーやコンビニ、オンラインショップなど“身近な店”で買える飲み切りサイズの日本酒を5本セレクト。ちょっとした酒肴を用意して、自宅で気軽に日本酒と向き合ってみてはいかがだろう。


1.「特別本醸造 八海山」――zoom飲みのお供に最適な抜群の包容力。
2.「黒松剣菱」――レンジで瓶のまま1分温めればコクのある熱燗に。
3.「純米にごり酒 夢見るひつじ」――ひとり飲みにどんぴしゃサイズのカップにごり酒
4.「すず音GALA」――リモートワークの疲れを労わるドライなスパークリング
5.「しぜんしゅ純米原酒」――米の甘味がナチュラルに広がり、水炊きと相性抜群。
6.【番外編】「しゅわしゅわ木内梅酒缶」――日本酒の蔵が造る、食事にも合う梅酒。

千葉麻里絵●日本酒ソムリエ、恵比寿の日本酒バー「GEM by moto」店主。化学的知見をもとに、一人ひとりの“いま”に合った日本酒を提供。さまざまなジャンルの料理人とのコラボレーションから、日本酒体験に時間と空間と温度を取り入れた新しいスタイルを模索する。また、日本酒の提供に論理的アプローチを取り入れるべく「SAKEカルテ」を考案し、たくさんの人が楽しく日本酒に出合えることを目指している。今回のセレクトに関しては「コロナ禍で多くの酒蔵が商品のサイズを見直し、小瓶のバリエーションが増えました。そういった飲み切りの日本酒をご紹介したいと思います」。

1.「特別本醸造 八海山」――zoom飲みのお供に最適な抜群の包容力。

「特別本醸造 八海山」。原料米は五百万石が主体。精米歩合は55%。 アルコール15.5度。180mL¥349(税別)/八海醸造 TEL:0800–800–3865

八海山といえば、淡麗辛口の新潟の酒を代表する蔵。清酒、純米酒、大吟醸などさまざまなラインアップがあるが、千葉さんが選んだのは冷でも燗でも楽しめる看板銘柄「特別本醸造 八海山」だ。「やはり大手は素晴らしいお酒を造ります。なかでも群を抜いた安定感をもつのが、このお酒。友達とzoom飲み会をしたり、お笑い番組を観たりしながら飲むのに最適です」。というのも「お酒の味わいの情報量が少ない分、会話や他のものに集中できる」からだそう。「これって実はすごいことなんです。大手の包容力に脱帽します。今回紹介したのは180mL瓶ですが、日持ちするので四合瓶を常温保存してもいい」。アテは和食やスルメイカなど、その時の気分で気合を入れずに選ぶのがお薦めだそう。

飲み方は冷やか常温で。湯呑みやコップで気軽に楽しもう。

2.「黒松剣菱」――レンジで瓶のまま1分温めればコクのある熱燗に。

「黒松剣菱」。原料米は山田錦が主体。精米歩合は年によって異なる。アルコール17度。180mL¥351(税込)/剣菱酒造 TEL:078-451-2501

500年以上の歴史をもつ剣菱酒造は、日本酒ラバーにもファンが多い兵庫県・灘の酒蔵。「黒松剣菱」は、お燗をすることで旨味が上がる(燗上がりする)酒として知られている。「あの『黒松剣菱』にこんなサイズがあることを知ってほしくて」ということで千葉さんが選んだ180mL瓶は、キャップを取って電子レンジで約1分温めるだけで燗酒ができる優れもの。「コロンとした丸い瓶のかわいさと裏腹に、味わいはかわくないところがツンデレで魅力的。深いコクのある味わいは、日本酒を飲み慣れた人にお薦め。バターピーナッツのようなオイリーな口当たりがクセになります。気心の知れた人と熱燗で盃を交わしてほしいお酒ですね」。

180mLボトルはグッドデザイン賞を受賞。「カズノコ、カラスミ、あん肝、スジコや、お節の黒豆とも最高に合います!」と千葉さん。

3.「純米にごり酒 夢見るひつじ」――ひとり飲みにどんぴしゃサイズのカップにごり酒。

「純米にごり酒 夢見るひつじ」。原料米は国産。精米歩合は78%。アルコール11度。180mL¥260(税込)/大関 TEL:0120-410-339

「ひとりでにごり酒を飲みたい時に、カップのサイズ感がどんぴしゃなんです」と言って千葉さんが選んだのは、2020年秋の発売以来、SNSで話題のカップ酒。トロリとしたなめらかな口当たりで、米の旨味が凝縮された純米タイプのにごり酒だ。「コンビニでも売られているのですが、知る人ぞ知る人気商品なので、見つけられたらラッキー」だそう。米の優しい甘味が馴染んだやわらかい味わいと相性がいいのは、「蜂蜜をたらしたブルーチーズや、キムチ納豆、焼肉、スンドゥブなど。カップの蓋を開けて電子レンジで温めた後、オリーブオイルをひとたらしすればおいしいスープにもなります」。1日の終わりに、自分へのご褒美として味わいたい。

「カップのまま冷酒」または「蓋を開けて電子レンジで50秒ほど温めて燗酒」で飲むのが千葉さんのお薦め。にごり酒本来の味わいを楽しむ際は5℃前後に冷やし、飲む前によく振って沈んだ「もろみ」を混ぜるといい。

4.「すず音GALA」――リモートワークの疲れを労わるドライなスパークリング

「すず音GALA」。原料米はトヨニシキ。精米歩合は65%。アルコール9度。375mL¥1,320(税込)/一ノ蔵 TEL:0229-55-3322

一ノ蔵の「すず音」は、1998年に誕生したスパークリング日本酒のパイオニア。それを瓶詰め後に半年以上熟成させた、ドライな味わいのスパークリング純米酒が「すず音GALA(ガラ)」だ。「スウィーティー(柑橘の一種)のような甘酸っぱさと適度な苦みとしゅわしゅわしたガスが溶け合って、気分が上がるお酒です。アルコール度数は9度と低めなので、日本酒を飲み慣れない人にもお薦め」。ランチタイムに冷蔵庫でキンキンに冷やしたものをシャンパングラスに注ぎ、トマトのカプレーゼやパスタ、ピザなどのイタリアンに合わせてみてほしいとのこと。「375mL瓶はワインのハーフボトルくらいの容量で、ふたりで空けるのにちょうどいいサイズ。リモートワークの疲れを労わるのに最適な一本です」

瓶内発酵によってもたらされるきめ細かな炭酸ガスが爽やか。冷やしてシャンパングラスで楽しもう。

5.「しぜんしゅ純米原酒」――米の甘味がナチュラルに広がり、水炊きと相性抜群。

「しぜんしゅ純米原酒」。原料米は自然米。精米歩合は80% 。アルコール16.5度。300mL¥715(税込)/仁井田本家 TEL:024-955-2222

福島県郡山市の仁井田本家が1967年の発売以来変わらぬ製法で造り続ける、身体に優しい甘口の純米原酒。自然栽培の米の個性を吟味し、その旨味と甘味を最大限に引き出す独自の製法で造られている。「蔵にすみ着いている酵母を使い、江戸時代から続く“生酛造り” の手法で手間暇かけて造られているお酒です」。杏やマロンクリームを思わせる甘味がきれいに広がる味に合わせたいのは、「水炊き、豆乳鍋、鶏肉、サーモン、クリーム系の料理」。「飲んだ次の日に身体に残らない、ナチュラルな飲み心地も魅力的」だそう。近頃は300mL瓶がナチュラルローソンなどで販売されている他、オンラインでも購入可能だ。

ロックか、60℃の燗酒で楽しみたい。

6.【番外編】「しゅわしゅわ木内梅酒缶」――日本酒の蔵が造る、食事にも合う梅酒。

「しゅわしゅわ木内梅酒缶」。原料は梅(茨城県産)、果糖、スピリッツ/炭酸ガス含有。アルコール6度。355mL¥451(税込)/木内酒造 TEL:029-212-5111

「日本酒ではありませんが、手頃なサイズでとびきりおいしいので」と千葉さんが追加してくれた番外編は、木内酒造の梅酒。木内酒造といえば昨今は「常陸野ネストビール」で有名だが、1823年から日本酒を醸造しており、昔から梅酒にも定評のある酒蔵だ。「木内酒造の梅酒が缶で、しかも微発泡で登場したとなれば、ゲットしない手はありません。梅酒は食前酒、デザート酒というイメージがあると思いますが、こちらは穏やかな甘さと酸味のバランスが絶妙」。相性がいいのは、「タイ料理、ベトナム料理、沖縄料理。豚の角煮や、唐揚げやハムカツなどの揚げ物と合わせると、梅酒の酸味がレモン代わりになってよく合います」。

キンキンに冷やして、ビールグラスで飲みたい。「缶のカジュアル感と味のギャップに食通の方も驚くので、手土産にしても」と千葉さん。