「Enjoy SAKE Life」をモットーに、能やドレスファッションショー、クラブイベントなどユニークなイベントを国内で行い、海外ではニューヨークやパリ、ベルリンなどで新しいSAKEシーンを提案しているのが、高知・桂浜のほど近くにある酔鯨酒造だ。
「酔鯨」のハイエンドコレクションの中でも最高峰に位置づけられる「純米大吟醸 DAITO」は、2016年の発売以来、毎年1200本のみ製造されているフラッグシップ。しかも今年、この最高級酒を象徴するボトルデザインを、建築家の谷尻誠が手がけることになったという。
谷尻が捉えたDAITOの魅力とは、いかなるものなのか? その答えを知るべく2020年11月某日、谷尻ほかクリエイター2名を招いて、酔鯨の大倉広邦社長を囲むマリアージュディナーが開催された。
マリアージュディナーは、代々木上原にある完全予約制の店「ヒトテマ」にて行われた。料理家の谷尻直子による、酔鯨のハイエンドシリーズ5種に合わせた“現代のおふくろ料理”がふるまわれた。
DAITOのボトルには、漆黒の背景に「(だいと)」が一文字。「味が華やかだから、デザインは極力シンプルに。そうすることで、お酒そのものと向き合うことができるのでは」と考えた谷尻。ボトルもワインセラーに入るサイズでスマートな形をしている。これは、「親父が一升瓶を抱えて酔い潰れるような日本酒のイメージを打破したい」という狙いによるものだ。
それを見て、「第一印象では日本酒なのかどうかわからない。デザインやボトルの形など意外なところが多いから、想像を誘います」と土井地。山川も「料理とお酒は想像力でおいしくなっていく。それをペアリングで出されると、つくり手の意図を考えるようにもなりますね」と続ける。
飲んで、身体で“おいしい”と感じるお酒。
国酒であるにも関わらず、年々消費量が減少している日本酒。そうした状況をふまえて、「本質的で永続的な価値の追求」をテーマに、DAITOのデザインを谷尻に依頼したわけだが、そもそも日本酒には約2000年もの歴史がある。ほかのどの酒よりも長い時間をかけてその土地の風土で育まれ、食文化とも強く結びつき、暮らしの一番身近なところにある酒だった。米と水と酵母だけでつくられる、世界で一番ナチュラルな酒でもある。
そういう意味では、日本酒はすでにサステイナブルを体現していると言える。「DAITOには、酔鯨がもつすべての技術を集約しました。それでもつくる過程では、ついなにかを付け加えたくなってしまう。その思いを、谷尻さんが引き止めてくれました」と大倉社長。
ディナーを終えて、3人のクリエイターが導き出したDAITOの“おいしい”はこうだ。
谷尻「ものづくりって、つくればつくるほど、つくらないことを考える。世の中も、どんどん足していくより、引き算でものを見つめ直すことが大切になってきているよね。僕は、食べ物に知識はいらないと思う。頭で考え『おいしい』じゃなく、飲んで身体で『DAITOおいしいっ!』て感じることがいちばん大事」
土井地「サステイナブルって、日本人の精神にそもそもあると思う。潜在的にあるものや使っていないものは、昔の文化(物語)を見つめ直せば簡単に見つかるし、実現できる。今日、デザインからつながるDAITOの物語を聞いて、『おいしい』って感じた」
山川「持続可能ってあまり頭で考えずに、シンプルに楽しくつくれば、なんでも続けられるんじゃないかな。ただ、続けるって守るんじゃなくて攻めていかないと、新しいものや人とつながっていかない。今日、やさしくておいしい料理とDAITOが出合って、私がこのお酒を飲めたことは、大倉社長の攻めの姿勢のおかげですね」
山川の言葉を受けて、「今日の異端は未来のデフォルト。もっと良くならないかと考え続けることが、歴史をつくるよね」と頷く谷尻。香りがおだやかでキレがあり、うまみを引き出すのが酔鯨の強み。3人の“攻め”クリエイターが認めるDAITOのおいしさは、大倉社長の日々のチャレンジの賜物だ。
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