クエルボ・イ・ソブリノスが2003年から行ってきているのが、「ラティーノインターナショナル賞」の表彰。優れた活躍をしたラテン系の人々を称え、俳優のアンディ・ガルシアやアントニオ・バンデラスらに与えられてきた、由緒あるアワードだ。そして創業125 周年の2007年から日本で始まったのが、「クエルボ・イ・ソブリノス ラティーノJAPAN賞」。日本で活躍する「ラティーノに相応しい熱いハートを持ち、表現を行う」人物を表彰するこの賞は、国境も人種も超えたラテン魂の栄誉だ。その2020年の受賞者は、『SLAM DUNK』『バガボンド』『リアル』等の作者で、表現者としてダイナミックでグローバルな活動を続ける漫画家の井上雄彦に決定した。
表彰が行われたのは、11月16日のスペイン大使館(東京・六本木)。翌日から大使館で開催される美術展「井上雄彦とガウディのバルセロナ」(「ハビエル・マリスカルとハバナの歴史」併催)のオープニングレセプションにて、スペイン大使、キューバ大使列席のもとで木内ムラキ社長が賞を贈呈した。井上は卓越した情熱と才能を、漫画家の枠に収まらない活動で示してきた。「日本スペイン交流400周年」を期に2014年から翌年にかけて日本各地を巡回した展覧会「ガウディ✕井上雄彦」は、いまも伝説的に語られる。今回の美術展にて展示される作品39点に、「クエルボ・イ・ソブリノス ラティーノJAPAN賞」の受賞が大きく華を添えた。
受賞記念品として贈呈されたのは、井上自身も望んだというモデル「ヴェロ ドミンゴ・ロシーヨ」だ。クエルボ・イ・ソブリノスで初のパイロット・ウォッチであるこのモデルは、航空史に名を残すドミンゴ・ロシーヨ・デル・トロへのトリビュートである。ロシーヨは1913年、巨額の懸賞金がかけられたキーウェスト・ハバナ間の初飛行に成功した、キューバの伝説的な飛行士だ。フロリダ海峡を一直線に飛ぶその90マイルは、不時着する無人島すら一つもない、完全な開放海域。しかも、もし海に落ちれば白い死神=ホホジロザメが群れを成す。恐怖を勇気に変えたドミンゴ・ロシーヨは、50馬力ロータリーエンジンのモラーヌ・ソルニエ機で海峡を飛び越え、クエルボ・イ・ソブリノスの創業地であるハバナに降り立った。大砲のような色のエイジング加工をケースに施した「ヴェロ ドミンゴ・ロシーヨ」は、セピア色の英雄譚を鮮やかに現代に蘇らせるのである。
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