10月1日、2020年度グッドデザイン賞とグッドデザイン・ベスト100がオンライン配信で発表された。応募総数は4769件。新型コロナウイルスが世界的にまん延する状況下、安次富隆審査委員長が「正直、驚きました」と言葉をもらすほど、例年と変わらない数の応募が集まった。その中から一次、二次審査会を経て、1395件が今年のグッドデザイン賞に選ばれた。
今年のテーマは、「交感」。ただ一方的な想いでデザインを創出するのではなく、人や社会、環境を知り、それらに応えるデザインであるかどうかが重視されている。このテーマはコロナ禍以前に決定したものだったが、齋藤精一審査副委員長は、「コロナ禍でデザインや産業に関わっている人に何ができるか考えると、本当に『交感』か起きないとさまざまな社会問題に対応や対策ができないと痛感し、(今年のグッドデザイン賞との)不思議なシンクロを感じた」と述べた。
ベスト100には、ビデオ会議システム「Zoom」や、東京都の「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト」など、まさに2020年の社会やライフスタイルの変化を象徴するようなデザインが選ばれている一方で、リニューアルオープンした渋谷パルコや京都市京セラ美術館、ソニーが進める次世代EVへの取り組み「VISION-S」など、社会的に話題となったデザインなども挙がっている。
さらに、世界初の持ち運び可能な水再生処理プラント「WOTA BOX」や、アメリカのテラサイクルが推し進める循環型のショッピングプラットフォーム「Loop」など、環境問題の解決に取り組むデザインも特徴的だ。
安次富さんは受賞作について、「個々の良しあしだけではなく、グッドの総体として見てほしい」と話す。「私たちの生活は洋服や椅子、住んでいる街や地域まですべて相互関係がある。だからこそ、グッドデザイン賞を総体として見てほしい。特にベスト100は、審査委員が選んだ総体のコア。メッセージ性が強いものだ」と語った。
毎年開かれている受賞作展は行われないが、今年は特設サイトを中心としたオンラインイベント『GOOD DESIGN SHOW 2020』を開催している。10月8日には、グッドデザイン・ベスト100の受賞者を迎えた公開プレゼンテーションを開催。当日はYouTubeを使ったライブ配信を予定しており、誰でも視聴可能だ。10月30日には、特別賞の発表と今年のグッドデザイン賞を象徴する大賞の選出会のライブ配信を予定。大賞選出会が一般公開されるのは、1957年の創設以来、初めての試みだ。
コロナ禍がもたらす影響は、人と人、人とものの間に物理的な距離をもたらした。しかし、グッドデザイン賞はそれらに屈しない新たな試みが目白押し。この挑戦が、この賞をより多くの人々と交感させる機会になるはずだ。
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オンラインイベント『GOOD DESIGN SHOW 2020』
開催期間:2020年10月1日(木)~11月30日(月)
主催:公益財団法人日本デザイン振興会
参加費:無料(事前登録不要)
特設サイトはこちら
企画展『グッドデザイン・ベスト100』
開催期間:2020年10月1日(木)~11月3日(火・祝)
開催場所:東京ミッドタウン・デザインハブ
東京都港区赤坂9-7-1ミッドタウン・タワー5F
開催時間:11:00~19:00(10月1日のみ15:00-19:00)
入場無料
企画展「私の選んだ⼀品」-2020年度グッドデザイン賞 審査委員セレクション
開催期間:11⽉2⽇(⽉)〜11⽉29⽇(⽇)
開催場所:GOOD DESIGN Marunouchi
東京都千代⽥区丸の内3-4-1 新国際ビル1F
開催時間:11:00~19:00
⼊場無料
ロングライフデザイン2020 2020年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞受賞展
開催期間:10⽉30⽇(⾦)〜11⽉8⽇(⽇)
開催場所: 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3
東京都港区⾚坂9-7-6
開催時間:11:00~19:00(⼟⽇祝⽇は10:00~19:00)
⼊場無料
問い合わせ先/日本デザイン振興会
www.g-mark.org