夏の暑さもようやく和らぎ、これから秋本番。気温的には過ごしやすくなるものの、少し厄介な秋雨シーズンに突入する。突然の雨も気になる中、カバンに入れておきたいのが、折り畳み傘だ。
今回おすすめするのが、アウトドアブランドの折り畳み傘。山などフィールドでの使用を想定し、アウトドアギアの開発で培われた技術が応用された傘は、とにかく軽量・コンパクトで、丈夫なのが特徴となっている。持ち運びがしやすいうえ、機能性を追求したシンプルなデザインは、街用としても優秀だ。
秋雨だけでなく、梅雨、夏の夕立と、日本の雨降りの時期は1年を通して案外長い。持っておいて損はない、折り畳み傘4選+αを紹介する。
【4選】
1. 都市の風景によくなじむ、落ち着いた色合いがスタイリッシュ
2. ゆったり大きめサイズと、老舗登山ブランドの技術に裏打ちされた安心感。
3. フィッシングロッドのテクノロジーを応用した、滑らかな使い心地。
4. 持っていることを忘れる軽さで、作り手の遊び心も楽しい1本。
【+α】
都市の風景によくなじむ、落ち着いた色合いがスタイリッシュ。
ものづくりの街として知られる新潟県燕三条に本社を置くSnow Peak(スノーピーク)。地元の高い職人技術により生み出される製品が、日本の登山・キャンプシーンを牽引してきた。洗練されたデザイン性も人気を誇り、アパレル事業でも存在感をみせている。
そんなスノーピークの手がける傘が「スノーピーク アンブレラUL グレー」だ。ブランドの代表的なテントカラーと同じグレーは落ち着いた色味で、都市の風景にもよくなじむ。これからの秋、冬シーズンにもぴったり。機能面としては、30D(デニール)の丈夫な生地と8本のフレームを採用し、キャンプや登山のフィールド使用にも耐え得る強度を備える。UVカット加工も施され日傘としても使用可能であるほか、カバンに入れても気にならない軽さ、コンパクトさを兼ね備えている。
PR担当の木下雄斗さんは「カバンの中に持っていれば、雨の日でも日差しが強い日でも毎日のように使えるアイテムです」と説明する。デザイン、機能の両面でバランスのいい1本と言えそうだ。
ゆったり大きめサイズと、老舗登山ブランドの技術に裏打ちされた安心感。
国内の登山用品大手のmont-bell(モンベル)が開発したのが「トレッキングアンブレラ」。モンベル広報部によると、山歩きに使える軽くて耐久性の高い折り畳み傘として、1987年に初代モデルが誕生した。今でこそハイキングに傘を使用する人も増えたが、当時は山で傘を差す発想がなく、新しい試みだったという。傘の生地には、独自技術の強い強力な撥水加工が施されているため保水を防ぎ、汚れにくくなっている。
改良を重ねた現在のトレッキングアンブレラ・シリーズ。軽さに特化したモデルやUVカット機能があるものなど多彩なラインナップの製品がそろうが、今回は2020年に新たに発売された「トレッキングアンブレラL」について特筆したい。ベーシックモデルに比べ傘の直径を大きくしたモデルで、ゆったりと差すことができ、街での使用に適している。また、大柄な人、荷物がある場合にも安心して使える。
30年以上の歴史を経て開発されたモンベル傘の最新モデル。その使い心地をぜひ体感してほしい。
フィッシングロッドのテクノロジーを応用した、滑らかな使い心地。
2017年に立ち上がったファッションブランドD-VEC(ディーベック)の隠れた看板アイテムが「カーボンテクノロジーポータブルアンブレラ」だ。アウトドアと無縁では? と思いきや、ブランドを展開するグローブライドは、釣り人にとって親しみ深いDaiwa(ダイワ)の運営会社でもある。
ディーベックの折り畳み傘は、フィッシング分野の開発で培った技術が存分に活かされている。傘のシャフト(中棒)は釣り竿のカーボンテクノロジーを応用し、大幅な軽量化に成功。その重量は、スマートフォンのおよそ半分の76gだ。約3年という長期の試行錯誤を重ね、中棒を伸ばした時にはしっかり固定され、軽い力で畳むことができるという独自の構造も考案し、特許を取得している。
広報担当の西岡皇人さんが「ファッションブランドとして見た目に美しいシルエットにこだわりました」と話す通り、光沢や張りのあるポリエステル生地を使っていて、高級感を感じさせる。
持っていることを忘れる軽さで、作り手の遊び心も楽しい1本。
学校体育用品を扱うメーカーとして広く知られるEVERNEW(エバニュー)は、登山・アウトドア小物でも高い技術力を発揮している。山小屋やテント場周辺のちょっとした行動時に便利な折り畳み傘として、超軽量製品の開発に力を注いできた。ここで紹介する「SL76アンブレラ」の重量はその名通り、わずか76gだ。骨を5本に絞り、極薄の生地を使用することにより軽さを実現している。
商品担当の仲亮典さんは「カバンに入れているのを忘れて、うっかりコンビニで傘を買ったことがあります。それくらい軽くて、小さい」とのエピソードを明かす。
デザイン面の遊び心にも注目したい。収納袋には、「雷三日」「風十里、雨二十里」などと天気に関することわざが記されて、「持って損なし76グラム傘」との言葉が紛れている。「ふとした時に『今日は雨が降るかもしれないから一応持っていくか』と思ってほしいという願いを込めた」そうだ。
バックパック派、もしくはどうしても濡れたくない人に。
最後にもうひとつ、折り畳みではないが、ユニークな傘を紹介したい。高機能アンブレラを作り続けるドイツの100年企業が手がけるブランドEuroSCHIRM(ユーロシルム)の「スウィングバックパック」だ。
バックパッキング用として開発されたモデルだが、傘の後部は生地が二重になっていて、開くと収納されていた内側の生地も後ろへ広がる仕組み。背負った荷物や背中が濡れにくいので、通勤、プライベートでバックパック(リュックサック)を使っている人におすすめだ。大切な書類やパソコンをしっかりと濡れから守ってくれるだろう。グリップ部分にもこだわりがある。人間工学に基づき握りやすさを追求した波型で、強風にも誤って手を離しにくい構造になっている。意外にも収納時は、一般的な長傘と同じかやや短く、比較的軽量。ケースには肩掛けひもも付属していて持ち運び方法の幅も広がる。
スタイリッシュで機能的なデザインは、プロダクトデザインの聖地ドイツのプライドを感じさせる。