目利きが選んだ、本当においしい日本のチーズ5選。

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:小久保敦郎
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日本国内のチーズ工房数は年々増加の一途をたどり、いまや300以上。海外のコンクールで入賞を果たすものも登場している。家で食事をする機会が増えたいま、まず狙うべき国産チーズはどれなのか。今回はチーズのプロとしてメディアや講演で活躍する圓子(まるこ)チーズさんがハード、青カビ、シェーヴル、白カビ、フレッシュと異なるタイプから、本当においしい5つの銘柄を厳選。おいしさをさらに引き出す食べ方や、相性のよいドリンクとともに教えてくれた。目覚ましい進化を続ける国産チーズ、その魅力を体感してほしい。

1.「タカラのタカラ」──加熱すると旨味が増す、ハードタイプの逸品。
2.「ブルーチーズ」──数々の受賞歴を誇る、しっかりした塩味と濃厚な味わい。
3.「 茶臼岳」──臭みのない、シルキーでなめらかなシェーヴルチーズ
4.「カマンベール」──牛乳本来の甘みとクリーミーな食感のチーズの王道。
5.「 東京ブッラータ」──ナイフを入れれば、生クリームがあふれ出す。

1.「タカラのタカラ」──加熱すると旨味が増す、ハードタイプの逸品。

「タカラのタカラ」約250g ¥1,800(税込、金額は前後する可能性あり)/チーズ工房タカラ TEL:0136-31-3855

チーズ工房タカラがあるのは、その美しさから蝦夷富士とも呼ばれる北海道の羊蹄山(ようていざん)の麓。酪農一家に生まれた斉藤愛三さんが、同名の牧場タカラで生産されるこだわりのミルクを使い、奥深い味のチーズを生み出す。圓子さんが選んだ「タカラのタカラ」は、ハードタイプの熟成チーズ。国産ナチュラルチーズのコンクール「ジャパンチーズアワード2018」でグランプリを獲得した注目の一品だ。

「キャラメルやローストアーモンド、バタースコッチのような香ばしく甘い香りが心地よく、旨味やコクが味わえるチーズ。チーズ好きはもちろん、どんな方にも愛される味です」と圓子さん。そのまま食べても十分おいしいけれど、ひと手間加えるとさらなる喜びが。「パン・ド・カンパーニュなど味わい深い田舎パンに『タカラのタカラ』をのせたトースト。また、ジャガイモやれんこん、ズッキーニなどの野菜とともに焼くのもいい。このチーズは加熱することで旨味を最大限に引き出すことができるのです」

紅茶やカフェラテと合わせて朝食にもお薦め。お酒に合わせるならコショウなどスパイスを振り、黒ビールやウイスキーとともに。樽熟成の白ワインやフルーティな赤ワインなら、さらなる奥行きを楽しめる。

2.「ブルーチーズ」──数々の受賞歴を誇る、しっかりした塩味と濃厚な味わい。

「ブルーチーズ」100g ¥1,512(税込)/アトリエ・ド・フロマージュ本店 TEL:0268-64-2767

1982年に長野県東御市で創業。国産ブルーチーズ製造の先駆けになるなど、日本のナチュラルチーズ工房としては長い歴史を刻むアトリエ・ド・フロマージュ。圓子さんお薦めの「ブルーチーズ」は、ヨーロッパに負けない青カビチーズを目指して30年以上前に開発を始めたもの。いまでは国内外のチーズコンテストで数々の受賞歴を誇るほど、専門家の評価は高い。

「なめらかな食感に青カビ特有の刺激、しっかりした塩味、濃厚な味わいが特徴。ヨーロッパの青カビチーズを思わせる本格派でありながら、日本らしい繊細さと品のよさを感じさせます。いつでも安定した味が楽しめる点も素晴らしい」と絶賛する圓子さん。良質な青カビチーズは甘いものとの相性が抜群。「ハチミツや干しブドウはもちろん、リンゴなど甘み&酸味のあるフレッシュフルーツと合わせてもいいですね」。料理に使えば、活躍の幅がもっと広がる。「セロリやキュウリ、アンディーブなどの野菜につけるディップソースとして。パスタソースやピザのトッピング、さらに椎茸などキノコ類やさつまいもにのせて焼きチーズにしてもおいしい。チーズそのものの味が濃いので、料理のいいアクセントになってくれます」

水分が多い青カビチーズは早めに食べ切るのがベター。お酒に合わせるなら、ソーテルヌやポートワインなど甘口タイプのワインとともに。日本酒なら貴醸酒や、華やかな香りと甘みのあるタイプと好相性。

3.「 茶臼岳」──臭みのない、シルキーでなめらかなシェーヴルチーズ

「茶臼岳」約180g ¥2,060(税込)/那須高原 今牧場 TEL:0287-74-2580

昭和20年代に那須高原で生乳づくりを始めた今牧場がチーズ工房をオープンしたのは8年前。チーズ職人の国際的組織「ギルド・クラブ・ジャポン」の認証を受けた高橋雄幸・ゆかりさん夫妻がチーズづくりを担当する。今回、圓子さんが選んだ「茶臼岳」は、雄幸さんが手がける熟成タイプのシェーヴルチーズ。

シェーヴルとは、ヤギのこと。ヤギのチーズに苦手意識をもつ人もいるが「新鮮な原料を使い、確かな技術があるので、特有の臭みはなし。ぜひチャレンジしてほしい逸品です」と圓子さん。「口当たりはシルキーでなめらか。チーズが少しずつほどけながら溶けていく感じがたまりません。ほどよい塩味と酸味、そして熟成からくるコクが、濃密さを生み出しています」。お薦めの食べ方は「シンプルな味わいのバゲットに、チーズといちごジャムやアプリコットジャムをのせて。サラダなら、ハーブや葉物野菜の上に薄くカットしてトッピング。パイの具にするなど、加熱してもおいしくいただけます」

木炭をまぶした外観は少し灰色がかっているものの、中は真っ白できめ細かく、白磁のように艶っぽいのが特徴。辛口の白ワインや吟醸酒など、すっきりした酒に合わせたい。

4.「カマンベール」──牛乳本来の甘みとクリーミーな食感のチーズの王道。

「カマンベール」110g ¥840(税込)/開田高原アイスクリーム工房 TEL:0264-42-1133 

開田高原チーズの原料は、長野県御嶽の麓に広がる標高1100mの高原でのびのびと育った牛のミルク。万谷ファームから工房へ、搾乳されたばかりの状態で運ばれてくる。圓子さんがセレクトしたのは、日本人にも好まれているカマンベール。チーズの王道だ。

「実はつくる際に苦味が出やすく、原料や製造技術の良し悪しに左右されやすいチーズです。このカマンベールは牛乳本来の甘みと、クリーミーな食感が特徴。熟成の若いときは軽やかですが、熟成が進むにつれ力強い味わいになります」。そのまま食べておいしく、加熱すればトロトロ感を楽しめるカマンベール。「シンプルにいくなら、バゲットに生ハムと一緒に挟んだサンドイッチ。加熱するなら、温野菜と食べるチーズフォンデュ、トマトの入ったチーズ鍋など。味噌や醤油との相性も抜群なので、アレンジは無限大です」

中央酪農会議主催の「第10回ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」で最高賞の農林水産大臣賞を受賞。ワインだけでなく純米酒や焼酎に合わせるのもいい。

5.「 東京ブッラータ」──ナイフを入れれば、生クリームがあふれ出す。

「東京ブッラータ」約150g¥1,080(税込)/& CHEESE STAND TEL:080-9446-8411

東京・渋谷に工房を構えるCHEESE STANDのコンセプトは「街にできたてのチーズを」。多摩エリアの牧場から届くミルクを原料に、毎日手づくりする。主力はフレッシュタイプのチーズで、東京ブッラータもそのひとつ。生クリームと繊維状にカットしたモッツァレラを、フレッシュなモッツァレラ生地で巾着状に包んだ個性派だ。

「生地にナイフを入れると、中からじゅわ~っと生クリームがあふれ出します。やや弾力のある食感、そして口に広がる穏やかな酸味にクリームの甘みが絡まって、幸せな気持ちになります」と圓子さん。食べ方は、塩とオリーブオイルをかけてシンプルにいただくのがスタンダード。「あとはトマトや生ハム、バルサミコ酢、ハーブを添えて。トマトの代わりに桃やブルーベリーなど旬のフルーツを使ってもいいでしょう。食べる直前に生地をカットすると見た目もよく、食材全体がクリーミーになり新たな味わいが楽しめます」

つくりたてならではのフレッシュ感がなによりの魅力。お酒に合わせるなら、スパークリングワインや辛口ワイン、スパークリング日本酒など軽快なタイプがぴったり。フルーツティーと楽しむのもお薦め。

圓子チーズ(まるこちーず)●チーズ・日本酒・ワイン・ガストロノミ講師、インフィニット・酒スクールプロデューサー。飲食のプロとして幅広く活動。多彩な飲食経験をもち、科学的視点でのチーズと日本酒のペアリングプロデュースを得意とする。現在「Japan Cheese Award(国産チーズコンクール)」の実行委員として、テイスティングレクチャーを担当し、国産チーズの普及発展に尽力している。2011年シュヴァリエ・デュ・タスト・フロマージュ・デ・フランス称号叙任。18年ギルド・クラブ・ジャポン「コンパニオン・ド・サントゥギュゾン」称号叙任。チーズは冷たすぎると香りや旨味を感じにくいため、常温に戻して味わうのがベター。加熱すると旨味が広がるので、少し古くなったら料理に使うのがお薦めです。国産ナチュラルチーズは注目度が高いだけでなく実力もある。生産者の個性も楽しんで」

インフィニット・酒スクール
www.infinite24.com

Japan Cheese Award
https://www.japancheeseaward.com/