ジル サンダーのメイヤー夫妻をキュレーターに迎えた写真雑誌が、6月上旬に国内発売!

  • 文:高橋一史
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ジル サンダーのクリエイティブ・ディレクションを手がけるルーシー&ルーク・メイヤー夫妻のポートレート。左がルーシーで、右がルーク。2020年にパリで撮影され、『A MAGAZINE curated by』第21号に掲載。©Olivier Kervern

モードブランド、ジル サンダーの世界観を知るなら、彼らのインスタグラムを閲覧するのが近道だ。広告に使われるビジュアルやムービー、ファッションショー関連の写真を一望できる。静寂な風景と端正な人物とが交互に登場して奏でるハーモニーは、詩や音楽のごとくリズミカル。ここには派手に着飾った様子も、露骨に性的な表現もない。きらびやかなファッショニスタもおらず、クリエイティブ・ディレクターを務めるルーシー&ルーク・メイヤー夫妻の姿さえほぼ見られない。あるのはふたりが生み出す知的なクリエーションと、独自の目線のみだ。バズ狙いのSNSに熱心な他ブランドとは一線を画す姿勢が小気味いい。

服のデザインでも現代アートのごときミニマリズムを貫くメイヤー夫妻がこのたび、ファッションデザイナーをキュレーターに迎えるベルギーの雑誌『A MAGAZINE curated by(エー マガジン キュレーテッド バイ)』の最新号である第21号にゲストとして選ばれた。夫妻は「自然界と、人によってつくられた現代社会」という相反する要素の相乗効果を表現することをコンセプトに、2019年7月から編集作業を進めた。

全240ページのうち写真が200ページを占め、キャプションを含む文章は巻末にまとめられた。雑誌でありながら写真集のような体裁である。写真の背景は、カナダの大自然、スイスのアルプス、パリやフィレンツェの街路など。内容はファッション写真、人物ポートレート、美術作品、アーティストのアトリエ、家族が描いたパーソナルなイラストなど多岐にわたる。表紙に採用されたのは、日本の能登半島の製紙業者が手づくりした花模様の和紙を、3Dスキャンした写真。「侘び寂び」に通じる夫妻のセンスが、この表紙からも感じられるだろう。

本号の取り扱いは世界30カ国のアート書店をはじめ、国内では6月上旬から¥2,750(税込)でジル サンダー直営店や公式サイトでも販売される。年内には花模様を白に変え、ジル サンダー製のタッセル紐をしおりとしてつけた限定200部の特別版もリリースされる予定だ。いますぐ通常版を入手するか、特別版の登場を待つかがファンの悩みどころになりそうだ。

『A MAGAZINE crated by』 の第21号カバーデザイン。日本工芸の和紙を撮影した写真だ。

19年にフルアルバムを初リリースしたチェリスト兼シンガーのケルシー・ルー。ジル サンダーを着て20年にパリで撮影された。©Richard Bush(『A MAGAZINE crated by』誌面より。以下同)

ブルース・ウィリス主演の映画『16ブロック』でも卓越した演技力を見せた、俳優兼ラッパーのモス・デフ。撮影は20年にバルセロナで行われ、服もジル サンダーだ。© Julia Hetta

19年にイタリアのフィレンツェで開催されたメンズ展示会「ピッティ イマジネ ウォモ」期間中に撮影されたイメージ。©Lina Scheynius

本号は新型コロナウイルスでフランスとイタリアがロックダウンされる中で印刷された。この記憶を留めるためにフォトグラファーのジャスコ・ベルトーリが上写真左のパリの路上を撮影。エマニュエル・コロンボが右のシシリー島の風景を撮り、どちらも本号に掲載された。©Giasco Bertoli、Emanuele Colombo

ルーク・メイヤー個人のメンズブランド、OAMCのショーバックステージ写真も掲載。©Jordan Hemingway

ジル サンダー公式サイト
www.jilsander.com/ja-jp

ジル サンダー 公式インスタグラム
www.instagram.com/jilsander