世界最古のラグジュアリーレザーグッズメゾン「デルヴォー」が語る、“ベルギーらしさ”とは。

  • 文:髙田昌枝(パリ支局長)
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アート通でなくてもピンとくる、マグリットの作品をモチーフにした山高帽のシルエット。内部のポシェットを取り出すと三日月が現れる、トロンプルイユのカード入れと書類入れ。A4ポシェット¥202,000、カードケース¥61,000/ともにデルヴォー(デルヴォー・ジャパン)

ベルギーの首都ブリュッセル。街はずれの住宅地に、以前は軍隊の兵器庫として使われていた煉瓦造りの歴史建造物がある。その一角を占めるのがデルヴォーの本社とアトリエ、そして完成したばかりのミュージアムだ。

デルヴォーの創業は、ベルギー王国誕生の1年前にあたる1829年。トランク製造業者として出発した世界最古のラグジュアリーレザーグッズメゾンであり、83年以来、ベルギー王家御用達の栄誉を守り続けている。

「ミュージアムをつくったのは、語る物語がたくさんあるから。だがコンセプトは回顧だけでなく、過去と現在を未来へ繋げることなのです」と言うのはCEOのジャン=マルク・ルビエ。アトリエを縦断し荷物用リフトで2階へ。そこにはメタル構造の空間に巨大なバッグが現れる。現代アートギャラリーかと思うようなエントランスだ。

ミュージアムが語るのは、創業以来の職人技とクオリティ。1908年に世界で初めて同社が意匠登録を行ったハンドバッグの歴史。そしてデルヴォーが大切にするベルギー精神だ。

軍の兵器庫だった煉瓦造りの建物に1994年から本社とアトリエ、ミュージアムが。見学はガイド付き、完全予約制。金、土、日閉館。

建物の1階は、デルヴォーのレザーグッズを製作するアトリエとして機能している。

ミュージアムの最初の展示は、トランク製造から始まった歴史を象徴。一番上は1908年に意匠登録された最初のハンドバッグ。

魅力はクオリティ、機能性、ウィットに富んだデザイン

1933年以来すべてのデザイン画、デザイン者名、サイズなどが記帳されてきたリーヴル・ドール。創業以来のデザイン数は3000にも。

1910年代にはトラムウェイの車掌用バッグを手がけ、58年にはブリュッセル万博のホステスのユニフォームバッグを製作するなど、常にベルギーの歴史とともに歩んできた。展示には、国土をかたどった限定バッグや、名物ムール貝の形のスペシャルオーダーバッグも並ぶ。

「ベルギーを発祥の地とするアールデコ、アントワープの急進的なモード。機能性を大事にし、驚きを与え、微笑みを誘うユーモア。それらすべてがベルギーらしさなのです」

そんなベルギー精神を、「デルヴォーの革製品を通して感じてほしいですね」とルビエは言う。

先ごろ発表されたマグリットコレクションは、そんな彼の思いを雄弁に語る。シュールレアリスムを代表するベルギー人アーティスト、ルネ・マグリットにちなんだ作品集だ。フラップを開けると内部に青空と白い雲が現れる書類ケースや、山高帽の向こうに別のモチーフがのぞくトロンプルイユ(騙し絵)のカードケースなど、ウィットに富んだデザイン。裏地にも最高級のナチュラルレザーを使用する、クオリティへのこだわり。「このコレクションをきっかけに、男性にもデルヴォーを発見してもらいたい」

ベルギー精神を展示したコーナーの一角には、ルネ・マグリット財団とのパートナーシップから生まれたコレクションが。


週末旅のお供にしたい、鍵穴モチーフのバッグ

マグリットの絵画『悪魔の微笑み』をモチーフにした鍵穴のデザイン。デルヴォーならではのやわらかなナチュラルレザーの裏地には二重のポケットが隠れている。週末の旅にぴったりのサイズ。バッグ(H34×W46×D16㎝)¥469,000/デルヴォー(デルヴォー・ジャパン)

●デルヴォー・ジャパン TEL:03-6418-0983