演劇、ダンス、音楽、美術などの気鋭のアーティストが世界から集まり、多彩なプログラムを繰り広げている『フェスティバル/トーキョー』(通称F/T)。今回Penが注目するのは、特集プログラム「トランスフィールド from アジア」だ。国境や文化を超えてボーダレス化しているアジアの舞台芸術やアート。その最先端の表現に一挙に触れられるチャンスとなっている。
『Bamboo Talk』『PhuYing』
伝統舞踊とヒップホップを融合させたコンテンポラリーダンスに取り組むヌーナファ・ソイダラ(女性)と、アジアやフランスで数々のヒップホップバトルに参加してきたダンサーで振付家のウンラー・パーウドム(男性)が2013年にビエンチャンで結成した「ファンラオ・ダンスカンパニー」が日本初上陸。
ファンラオは、「ラオスに耳を傾ける」という意味。今回はラオスの伝統音楽モーラムを用いた舞踊とヒップホップを融合した『Bamboo Talk(バンブー・トーク)』と『PhuYing(プニン)』の2作品を披露。ラオスのダンス・シーンを牽引する彼らが、急激な近代化を遂げるラオスの人々の心のリアルを描き出す。
国境を超える、モノと人の物語。
『To ツー通』
マレーシアの首都・クアラルンプールやペナン島を拠点に、移民やモノの移動などをテーマに創作活動を行ってきたオクイ・ララ。人種がミックスされた多文化コミュニティにおける人と表現の変化を探ってきた滝朝子。共通点の多いアジアのアーティスト2人が、初のコラボレーションでレクチャー・パフォーマンスを行う。
いまや260万人以上の外国人が暮らす日本。移民の彼らは、故郷と日本との間で生活用品や贈答品、仕送りなどをやりとりしている。今回は、そのモノの背景にある物語を紐解きながら、「移動」をテーマにしたパフォーマンスなども行う予定。国境を越えるモノの物語が、「境界」や「適応」について考えさせてくれる。
メディア・アーティスト谷口暁彦が初めて劇場作品に挑戦。
『やわらかなあそび』
サイコロを用いたリアルタイムシミュレーション『骰子一擲』(18年)や、自らのアバターを踊らせた『The Big Browser 3D』(16年)などの作品で注目を集めてきたメディア・アーティストの谷口暁彦がF/T19に登場。今回は、クッション素材でつくられた子供のための遊び場「ソフトプレイ」とバーチャル空間を重ね合わせた初の劇場作品を披露する。メディア・アートをはじめ、映像、彫刻、ネット・アートなど様々な手法で作品を発表してきた谷口が、身体すら必要としない新しい「上演」への取り組みに挑戦する必見のプログラムだ。
移動式の砂場を運び、都市を見つめ直す体験型パフォーマンス。
『Sand (a)isles (サンド・アイル)』
フィリピン・マニラを拠点に活動するパフォーマンス・メイカーのJK・アニコチェと、演劇カンパニー「新聞屋」の美術制作などで知られる若手建築家の山川陸が、マニラ、ビエンチャン、クアラルンプール、東京でアジアの都市空間をリサーチ。そこで得たものを活かし、観客とともに街を探索するパフォーマンス・プログラム「サンドアイル」を展開する。
日本の都市空間は、どこかへ向かうための「通路」で構成されている。参加者は移動式の「砂場」を運びながら、大都市・池袋の通路、約500メートルを100分かけて3周。都市の中で人々が語らい過ごす穏やかな場所を発見したり、運んできた砂場で都市空間に「砂の島」をつくり出す“練習” を行う、というユニークな体験をする。この体験は現代の都市で生活していく上での、新たな視点やヒントを与えてくれることだろう。
人と都市から始まる舞台芸術祭
フェスティバル/トーキョー19『からだの速度で』
開催期間:10月5日(土)~11月10日(日)
開催場所:東京芸術劇場、シアターグリーンBIG TREE THEATERほか
主催:フェスティバル/トーキョー実行委員会
「トランスフィールドfrom アジア」共催:国際交流基金アジアセンター
TEL:03‐5961‐5202