絵本には、大人になった今だからこそ楽しめる世界があります。また一冊の絵本との出合いが、ときに一生の宝物になることも。独自の切り口で絵本を揃える人気書店で、店主のお薦め本とセレクトのこだわりを取材しました。
<東京・中目黒>童心に返る、古書との触れ合いを演出。
中目黒駅前の商店街が住宅地の風景へと変わる道すがら、ふと寄り道したくなる古書店があります。名前は「デッサン」。店主の大和田悠樹さんは「古い絵本の佇まいが好き」と語ります。「忘れてしまったなにかを思い出させてくれるのが絵本のいいところ。絵をデッサンから始めるように、大人になってなにかを体験し直すきっかけとして“大人の絵本屋”をやりたかったんです」。散歩途中の親子連れや、美術書を探すデザイナー、洋書の絵本を求め外国人が来たりと、客層は幅広い。「同じ絵本でも版によって紙質や訳者が違ったり、雰囲気が異なるのが面白い」と大和田さん。古書ならではの味わい深い一冊が探せます。
店主のお薦め絵本
イヌイットに伝わる詩に、染色家の柚木沙弥郎さんが力強い絵を添えた本です。人も動物もみな同じ言葉をもっていた世界では、人は動物にもなり、動物が人にもなれた。不思議な詩ですが、おおらかな絵がプリミティブな言葉の力を感じさせます。
デッサン
東京都目黒区上目黒2-11-1
TEL:03-3710-2310
営業時間:12時~20時
定休日:火
https://dessinweb.jp
<東京・神保町>グラスを傾けながら、絵本と向き合う時間を。
絵本と児童書の専門店でありながら平日は23時まで営業し、店内のバーではビールやカクテルも提供する「ブックハウスカフェ」。本の街・神保町で、絵本片手に酒を飲むスタイルを提案したいと、店長の茅野由紀さんは話します。「2017年に、新たにカフェとバーを設置した絵本専門店としてオープンしました。仕事帰りにバー目的で立ち寄ってくれる人をはじめ、絵本が普段身近にない人も入店しやすくなったと思います。幅広い世代に開かれた交差点のような店でありたいです。絵本とお酒で究極の癒やしの時間をぜひ」。ダンサーによるポールダンスのショーを店内で繰り広げたりと、子どものための場所を超えた、挑戦する絵本専門店です。
店主のお薦め絵本
もともと松本大洋さんの絵が好きでして、夢枕獏さんとのコラボに驚きです。中国の神話に登場する「渾沌」の成り立ちを題材に、壮大な世界を松本さんが見事に描き切っています。「こんとん」という響きの美しさと妖しさ。大人こそ、この深みにハマるはずです。
ブックハウスカフェ
東京都千代田区神田神保町2-5 北沢ビル1F
TEL:03-6261-6177
営業時間:11時~23時(月~金)、11時~19時(土・日・祝)
不定休
www.bookhousecafe.jp
こちらの記事は、2019年Pen 4/15号「泣ける絵本。」特集からの抜粋です。