いつの時代も、本物を知る者は必ずライカを選ぶ、と言われています。それは一体なぜなのでしょう。また、いつもは撮影される側の俳優やモデルをはじめ、写真にかかわる機会の多いクリエイターにも、ライカ愛好家は少なくありません。彼らに愛機とのなれそめを訊き、その魅力について考えました。
ライカを手にしたのは、アラーキーがきっかけです。
「荒木さんを演じるには、カメラに馴染んでいないといけないし、映画を撮った記念にもなるのでライカを買おうと思いました」
竹中直人さんが監督・主演を務めた映画『東京日和』は、写真家・荒木経惟さんと妻の陽子さんによる同名の私小説を原作にした、センチメンタルなラブストーリー。竹中さんは劇中でプロの写真家に扮しました。
「東京の下町をロケハンしながら、『ライカM7』でたくさん撮りました。楽しかったですよ。シャッターを押す時はドキドキしました。フィルムを巻く感じもいいですよね。最近はデジタルの『ライカQ』で撮ることが多いですが、いま改めてファインダーをのぞいたら、画角に集中する感じが甦ってきて、呼吸が荒くなりました(笑)」
映画公開からほどなくして、竹中さんは香港で運命のライカと出合います。
「ライカにドラゴンが彫ってあるなんて、これはもう、ブルース・リーじゃないか! うわぁ、これ絶対買わないとダメだっ! と運命を感じました(笑)」
竹中さんにとって憧れのブルース・リーを思わせる「ライカM6」の限定モデルは、手に取り街へ出るだけで、高揚感をかき立てるものでした。ですが一方で、ライカはシリアスな写真撮影の道具でもあります。
「フィルムのライカで撮るとある種の重さを感じます。腰つきも変わりますし、そう簡単にはシャッターが押せないです」
レンズから考えて、合うボディを選ぶ派です。――村上淳(俳優)
「基本の『ライカM3』や、無駄を削ぎ落とした『ライカM2』が好きですね。できる限り人の手で直せる機械式がいい。フィルムはすべてモノクロです。いろいろなカメラを使うけど、『ここぞ』の場面では必ずライカですね。10年かけて少しずつ増やしていきました」
村上淳さんがライカに注ぐ熱量は半端ではありません。M型を買っては、コレクションに加えるのではなく徹底的に使います。レンズもライカ用のみならず、映画撮影用の「クック・スピード・パンクロ」など古今東西の名玉も試すことで、キャラクターを深く理解してきました。
「ライカのよさは、つまりはレンズのよさです。被写体の気配を残す“ボケ”が特徴ですよね。ライカを買う時はレンズから考えて、それに合うボディを選びます」
カメラとレンズに施したカスタムペイントについて訊いてみると、「ライカが投機の対象になって高騰しているじゃないですか。それに対するアンチの気持ちです」との返事が。リセールバリューなんて関係ない。ライカで撮る、という強い意志表示がそこにあるのです。
“運命”を感じた、気品高きエルメスエディション――KIKI(モデル、女優)
モデルとして臨んだ、とある撮影で、カメラマンが使っていたライカに目を留めたKIKIさん。シルバーのボディにブラウンのスムースレザーが巻かれた、優美な佇まいの「ライカMP エディション・エルメス」でした。「ちょっと撮ってみる?」と誘われるままシャッターを押し、すぐに運命的ななにかを感じたそうです。
「シャッター音がまるで絹のように、硬すぎず、なめらかで、とても気品のある音のように聞こえました。ライカのことをろくに知りもしないくせに、ただただモノの魅力に惹かれて、『これはフィーリングで買っても絶対に後悔しないものだ』と確信してすぐに購入しました。それから15年ほど経ちますが、フィルムカメラはこの1台だけをずっと愛用しています」
趣味で山登りを続けているKIKIさんは、このライカMPで山の景色を撮影することが多いそうです。
「遠出をしなくても、地元鎌倉の山を撮影することがライフワークになっていて、最近はトレイルランをする時でも、このカメラをぶら下げて走っています」
…以上、「いま明かす、僕らがライカに恋した理由。」でした。こちらの記事は、2019年Pen3/1号「完全保存版 ライカで撮る理由。」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちらから。