今年1月3日に中国の無人探査機が世界で初めて月の裏側に着陸。大きな話題になりましたが、その月の裏側をリアルに描いたオメガ「スピードマスター」の特別モデルが登場しました。
そもそも宇宙に浮かぶ天体に裏も表もないのですが、月だけは希有な例外。自転と公転が同期しているため、常に同じ面だけを地球に向けているからです。これがいわゆる「表側」であり、その裏側を私たちは見ることができません。月を神秘的な存在にしている理由のひとつですが、1968年にアポロ8号は初めて月を周回(10回)。宇宙飛行士は謎に満ちた裏側を眼前にしました。それから50年を記念してオメガが発表した特別モデルが、「スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン アポロ8号」です。
ダイヤルは内部の動きが視認できるスケルトン仕上げになっていますが、メインプレートやブリッジにレーザー加工を施して、私たちにはお馴染みの月の表側をアレンジ。クレーターなどが広がるリアルな月面を楽しめます。それだけでなく、シースルーのケースバックで宇宙飛行士だけが見られる裏側=ダークサイドを表現していることが際立った特長です。いわば月の表と裏側を、まるごと腕に載せられるモデルと表現できるかもしれません。
このケースバックから精緻なメカが見られるムーブメントは、“ムーンウォッチ”(月に初めて行った時計)の栄誉を担う手巻きのキャリバー1861。ただし、月面の装飾が施されていることから、初の月面着陸に敬意を表して、1969年にちなんだキャリバー1869と命名されています。
これを囲むように、“WE'LL SEE YOU ON THE OTHERSIDE”(あちら側でまた会おう)という言葉も刻印。月の裏側は無線が途絶えるため、アポロ8号の操縦士が地上管制センターに向けて送った最後のメッセージであり、裏側からのアザーサイド=「あちら側」とは即ち表側ということです。
ちなみに、この言葉を発信した操縦士はジム・ラヴェル。2年後にアポロ13号の船長に起用されたものの、月への途上で酸素タンクが爆発。絶望的な危機に遭遇することになります。このアポロ8号での経験と、腕にした「スピードマスター プロフェッショナル」による秒計測で軌道を修正。奇跡的な生還を果たすのですが、そんなエピソードも思い起こさせるモデルなのです。
ケースは酸化ジルコニウムを原料とする艶ありのブラックセラミック。セラミックは近年のオメガが得意とする素材であり、硬度が高いので傷がつきにくいことが特長です。ブラックベースのケースとベゼル、ダイヤルに、タキメーターの目盛りやバーインデックスには、ホワイトのスーパールミノヴァ(蓄光式夜光塗料)をコーティング。クールなコンビネーションになっています。その一方で、クロノグラフ関連の指針はコントラストの効いたイエローで統一。ストラップはブラックレザーですが、パンチングされた穴から裏打ちのイエローラバーが覗くほか、両サイドのステッチもイエローに合わせています。
個性的でスタイリッシュながらも、“ムーンウォッチ”の卓越した機能と実用性を引き継いだモデルであり、くしくも今年2019年はアポロ11号が人類初の月面到着に成功した1969年から50周年。2月にはそれを描いた映画『ファースト・マン』の公開も予定されていますが、宇宙をめぐる冒険とロマンの象徴として、語れることが多い特別モデルといえるでしょう。
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