デビューするや大絶賛の嵐を巻き起こした新型ジムニー。自動車デザインにはまだまだ可能性があることを、一台の軽自動車が見事に証明しました。
和の美意識が生んだ、ソリッドなデザイン
ジムニーのチーフエンジニアである米澤宏之を中心に、新型ジムニーの開発チームが目指したのは「無駄を削ぎ落とした機能美」でした。ジムニーは世界194の国や地域に輸出され、森林を管理する人などが使う、本格的な“働くクルマ”。ゆえに、ボディの四隅を把握しやすいスクエアな形状や、激しい段差を乗り越えてもボディ底部を擦らない最低地上高、雪が付着しないように直立したサイドウィンドウなど、デザインにあたっては機能を最優先しています。
機能優先というと聞こえはいいですが、米澤が率いる開発チームにとっては制約が多いということでもあります。抑揚のある面の構成やエッジィなキャラクターラインなど、差別化を図るための技を封印されてしまうからです。
しかし、スケッチを描くデザイナーの手は縛られませんでした。徹底的に機能を追求し、丸目のヘッドランプや5本のスリットが入ったフロントグリルなど、かつてのアイコンを巧みに引用したのです。結果、どこか懐かしく、またペットのように愛しく思えたりと、機能美に温かみが加わりました。
新型ジムニーから連想するのは、狭くてなにもないのに無限の広がりを感じさせる茶室。そういう目で見ると、きわめて日本的なデザインであると思えてくるのです。
チーフエンジニアの米澤宏之さんに聞いた、新型ジムニーのココが変わった!
米澤宏之(スズキ四輪商品第二部チーフエンジニア)
●1987年入社。軽自動車用エンジンやターボエンジンの開発に携わる。2009年、電動システムの開発を行った後、13年、エスクードとジムニーのチーフエンジニアに就任。
「無駄を削ぎ落とした機能美」の進化を振り返る。
1970年
初代ジムニーは軽自動車初の本格的な四輪駆動車としてデビュー。はしご型フレーム、FR(後輪駆動)レイアウトのパートタイム式四駆、リジッドアクスル式サスペンションなどは現在も継承。
1976年
この年に軽自動車の規格が変更。サイズは変わらないまま、エンジン排気量が359ccから539ccへと拡大した。72年のマイナーチェンジで、フロントグリルのスロットルが縦長に変更された。
1977年
輸出仕様をベースに、日本国内向けに仕立てられた「ジムニー8」。軽自動車ではなく小型車として登録された。写真の幌ボディの他に、メタルルーフのバン、輸出仕様のピックアップも存在。
1981年
フルモデルチェンジを受けて、2代目へと移行。海外市場を意識した世界戦略車として開発された。そうした経緯もあり、デザインはスタイリッシュさを意識。初代より幅広いユーザーを獲得。
1984年
2代目ジムニーが最初のマイナーチェンジを受ける。エンジンなど機関の変更が主体で外観はあまり変わらなかったが、のちに天井を高くし、明かり窓を備えたパノラミックルーフ仕様を設定。
1986年
この年より、ターボエンジン搭載モデルにはボンネットにエンジン冷却用のエアインテーク(空気取り入れ口)が備わるようになった。エアインテークは3代目ジムニーまで継承されることになる。
1990年
2代目ジムニーが2度目のマイナーチェンジを受ける。軽自動車規格の変更に伴い、この年よりエンジン排気量が657ccに拡大された。バンパーが大型化され、フォグランプの位置も変更に。
1995年
サスペンションにコイルスプリングを採用した過渡期モデル。パワーユニットはシャープな走りを生むオールアルミ製ツインカムターボエンジンを搭載し、車両重量を軽量化、走破能力をアップ。
1998年
フルモデルチェンジを受け、3代目となった。これまでのスクエアな形状から丸みを帯びたデザインとなり、イメージ一新。デザインの賛否は分かれたが、快適性や安全性などは大きく進化した。
…以上、「購入まで1年待ち! 天下無双のカーデザインを誇る軽自動車「ジムニー」の魅力とは?」でした。こちらの記事は、2018年Pen12/15号「今年最も輝いた表現者たちの軌跡 クリエイター・アワード2018」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちらから