今夜は早めに帰宅して、家で一杯やろう……なんて夜。コンビニで適当につまみを買って、という人も多いかもしれません。もちろんそれもよしですが、ひと手間かけて、ワンランク上のつまみをつくってみてはいかがでしょう。
そこで頼れる助っ人としてご紹介したいのが、気鋭のバーテンダー、料理家、シェフという3人の食のプロが、お酒をおいしく楽しめるつまみのレシピを伝授してくれるこちらの3冊。『バーの主人がこっそり教える味なつまみ』『トラネコボンボンの空想居酒屋』『小さな店が教える玄人つまみ』です。
まず一冊目、『バーの主人がこっそり教える味なつまみ』の著者は、銀座のバー「ロックフィッシュ」の名物バーテンダー・間口一就(かずなり)。ロックフィッシュといえば、キリッと冷えた極上のハイボールが飲めることで有名な店。また、シンプルながらもひとひねりあるつまみもこの店の人気を支えています。間口はつまみ本を何冊か出していますが、なかでもロングセラーを誇るのが本書。バーテンダーらしく「酒に合う」ことに徹底してこだわり、ユニークなアイデアをちりばめた「切るだけ」「混ぜるだけ」「火にかけるだけ」の簡単レシピ170品を掲載しています。ほとんどのメニューが、包丁1本さえあれば、あっという間につくれてしまうので、料理が苦手な人でも安心です。トマトをくし型に切ってオリーブオイルとゆかりをかけたり、ナスの浅漬けをプロシュートで巻いたり、納豆とクレソンとキムチを混ぜ合わせてマスタードで和えたり……。プロの視点から生まれた意外な食材の合わせワザが、晩酌をよりいっそう楽しくしてくれます。
予約の取れない人気店のメニューに、自宅で挑戦。
2冊目の『トラネコボンボンの空想居酒屋』。著者の中西なちおは、店を構えず、旅するレストラン「トラネコボンボン」を主宰する女性料理人。旅をしながらさまざまな国の料理を提案しています。ブログで動物の絵をアップする作画家でもあり、本書では挿絵も描いています。
この本が一般的なレシピ本と異なるのは、遊び心あふれるその設定。章ごとに、国内外のさまざまな「空想居酒屋」を登場させ、その店が提供しそうなつまみを紹介しています。
たとえば「スナックようこ」の章では近所にある人気スナックを想定し、“ようこママ”がつくる気の利いたつまみを紹介。絹ごし豆腐に酒盗をのせ、小ネギとショウガだれを添えた「酒盗奴」は日本酒と相性よさそう。ゴマ油と塩でもみ込んだ海老入り「揚げワンタン」はサクッと香ばしく、和からしがピリッと効いてビールはもちろん、レモンサワーが進みそうです。このほか、ガード下の立ち飲み屋「スタンドマルチーズ」や、台湾を舞台にした「台灣夜市」など、酒場シーンが思い浮かぶ店が続々登場。自宅に友人を呼んで、本書を手に空想居酒屋を開店してみるのもいいかも知れません。
荻窪の自然派ワインビストロ「オルガン」、広尾のイタリア料理店「メログラーノ」、神泉のダイニングバー「ぽつらぽつら」……。3冊目の『小さな店が教える玄人つまみ』の目次を見ると、予約の取れない人気店20軒がずらりと並びます。これらの店の共通点は、わずか数坪の「小さな店」であること。カリスマオーナーが経営する小さな繁盛店が、レシピを惜しげもなく公開しているのです。
さらにありがたいのは、料理のプロセスまで写真入りでわかりやすく紹介しているところ。たとえば「ぽつらぽつら」の米山有シェフは、簡単につくれてお酒のあてにぴったりな「桜海老とパクチーのブルスケッタ」を披露。そのレシピは、オリーブオイルで炒めたニンニクと桜海老に、トマトとタマネギ、パクチーを合わせ、ビネガーで酸味を加えてバゲットにのせるだけ。パクチーを加えたエスニック風のブルスケッタは、よく冷えた辛口の白ワインと相性抜群ですが、桜海老と相性のいいロゼにも合いそうです。
本書に登場する店はジャンルもさまざまなので、ページをめくりながらレストランを選ぶように家で料理をつくってみるのもいいですね。
さて、そろそろ一杯飲みたくなってきたのではないでしょうか。3冊のつまみ本、どれをおともにしても楽しい晩酌になることは間違いなしです。