韓国映画の面白さを知らしめた『シュリ』の公開から早20年近く、ドラマ『LOST』でもお馴染みのキム・ユンジンの主演作『時間回廊の殺人』が公開中です。国際的に活躍する彼女は『セブンデイズ』などのヒット作をもつ、“スリラーの女王”。『国際市場で逢いましょう』に続いて特殊メイクで老いた姿も披露して、彼女自身がジャンル映画での演技を思いっきり楽しんでいるのだろうな、という全力のリアクション芸(!?)を見せてくれます。
とある一軒家で夫と息子を殺害した容疑で逮捕されたミヒ。息子の遺体が見つからないままの事件でありながら、ミヒは25年もの時間を刑務所で過ごすことに。年老いた彼女は仮釈放されて自宅に戻り、受刑者の面倒を見ている神父に手助けしてもらいながら事件の真相を調べ始めます。するとこの家では、25年ごとに不可解な出来事が起きていたことが発覚して……。
ごく普通の家に見える住宅で起こる数々の心霊現象と、過去と現在の隙間で起こるミステリアスな事象、祈祷師が登場する場面には奇妙なユーモアも顔をのぞかせて、どこに連れて行かれるのか先読みはまったく不可能! 『プリースト 悪魔を葬る者』のチャン・ジェヒョンが手がけた脚本はアクロバティックな仕掛けに満ちています。若き神父に扮したのは、アイドルグループ「2PM」のメンバーであり、俳優としても着実にキャリアを積んできたオク・テギョン。鍛えられた肉体を祭服で包んで、この映画における一筋の光のような存在感を発揮しました。
恐怖と驚きと笑いを感じさせつつ、最後には美しい母の愛へと着地していく脚本が実に見事。“時間の回廊”を入れ込む力業と、神父のエピソードも含めてすべてをしっかり回収していく緻密さが同居するストーリーから目が離せなくなるはずです。意外な展開に翻弄される興奮を、存分に味わってみてください。
原題:House of the Disappeared
監督:イム・デウン
出演:キム・ユンジン、オク・テギョン、チョ・ジェユン
2017年 韓国映画 1時間40分
配給:アルバトロス・フィルム
3月17日よりシネマート新宿ほかにて公開。