1867年の大政奉還による江戸幕府終焉に先駆けること8年、世界に向けた開港地となった横浜は、外国人の居留地が作られ、西洋建築が立ち並び、洋装や洋食がいち早く上陸する、先駆的な近代化の街として発展しました。活気あるその様子は、明治期の浮世絵や流行していた写真にも描写されています。その面影はいまも残り、ちょっとレトロでファッショナブルなエリアとなっています。そこは西洋文化の受容だけではなく、生糸やお茶などとともに、漆器や陶磁器などの日本の工芸品が輸出される拠点でもありました。来日した外国人らが持ち帰る記録や情報と合わせ、日本文化の発信地でもあったのです。折しもヨーロッパは万国博覧会の時代。初めて目にする極東の文化の数々に魅了された西洋では「ジャポニスム」ブームが巻き起こり、その需要に応えるべく、日本では政府主導で輸出政策が強力に推し進められました。19世紀後半から20世紀前半に、西洋から日本へ、日本から西洋へ、互いに「異国」の文化に触れ、影響を受けて生み出されたものたち。それらを、ファッションを基軸にアートとともに観ていく展覧会が、まさにその開港地にある横浜美術館で開催中です。
京都服飾文化研究財団所蔵のドレスや服飾品およそ100点に、横浜美術館のコレクションや国内外から集められた絵画や工芸品とで構成された空間は、なによりマネキンに飾られた、美しく精緻、そして豪華なドレスやガウンが魅せてくれます。あるものはキモノの形態に西洋的な刺繍や織りがほどこされ、あるものは洋装のテキスタイルに和風の模様が採りいれられて、やがてそれぞれのデザインに溶け込んでいくのが見られます。それは、コルセットで腰を絞るものから、ゆったりとしたきもの風のシルエットへ、そしてアール・デコへとつながる直線的なデザインへと、女性を開放しつつ、その肢体の魅力を引き出す形へという変遷とも重なります。併せて展示される絵画や工芸品からは、こうした衣装に身を包む女性たちや街の風景が描かれ、花瓶やアクセサリーのモティーフが相互に活かされているのも確認できて、時代の空気と東西の交流の姿をより感じられる内容になっています。
日本と西洋、遠く海を隔てたふたつの地域で交わされた装いと文化の交流は、互いにその影響を繰り返し受容して、新しい美へと昇華していったのです。幸せな時代の、往復書簡のような、さざなみのような響き合い、ぜひその目で確認してください!
「ファッションとアート 麗しき東西交流」展
開催期間:~6月25日(日)
開催場所:横浜美術館
神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
開館時間:10時~18時(5/17は20時30分まで、入館は閉館30分前まで)
休館日:木曜
TEL:045-221-0300
入場料:¥1,500
http://yokohama.art.museum