2016年米国タイム誌上で「世界で最も影響力のある100人」に日本人でただひとり選ばれ、日本が生み出した最大のアーティストとして世界で評価を受ける草間彌生。彼女の制作意欲はとどまることなく、ますます旺盛に作品を生み出しています。その最新作を含む過去最大級の個展が、六本木・国立新美術館で始まりました。最初期から現在まで、絵画、彫刻、パフォーマンス、インスタレーションから詩や小説の創作に至る多彩な作品で追う、集大成ともいえる内容です。
会場入口で彼女の描く富士山に迎えられたのち、わたしたちが目にするのは、水玉の花々のオブジェを囲む壁一面に並んだ「わが永遠の魂」。2009年から取り組んでいる大型絵画シリーズ500点以上の作品から約130点が、一挙に日本初公開される超巨大空間です。まさに永遠に続くかのような、草間の圧倒的なエネルギーに包まれます。そこから、この部屋をぐるりと取り囲んで、彼女の画業を辿るタイムスリップが始まります。
具象と抽象のはざまに、痛々しいまでの生命感を感じさせる初期作品たちから、1957年に渡米、15年間のニューヨークでの活動の時代へ。最初に評価を受けたモノクロームのネット・ペインティングや、パフォーマンスの先駆けともいえる映像、そして性や食など、人間の欲望を強迫観念的に表したソフト・スカルプチャーは、先鋭的で、ある種の攻撃性を持ちながら、観るものへの問いかけに満ちています。
その後、体調を崩して帰国、東京で入退院を繰り返しながらも創作を続けた草間の作品は、水玉やネット、男根など、これまでのモチーフを新しい解釈で捉え直していきます。より大胆に、よりカラフルに。黒いドットの入ったカボチャは種苗問屋に生まれた草間にとっては愛着の深い植物で、彼女自身を表すアイコンともなりました。今回4mを超える巨大なカボチャのオブジェが屋外に展示されているのも見どころです。また、鏡の空間に無数の光が点滅し、まるで宇宙空間に浮かび、自身もその一部になったような感覚を味わえる、《無限の鏡の間》も楽しめます。
一周りすると、ふたたび戻ってくる《わが永遠の魂》の部屋。草間の「いま」のインパクトから、時間の旅へ、そしてふたたび「現在」へという作りは、生と死の永遠を追求し続ける彼女のコンセプトそのものにも感じられます。メビウスの輪のような展示空間を体感しないのはもったいない! ひととき日常を忘れて、草間彌生ワールドに身をゆだねてみませんか?
「草間彌生 わが永遠の魂」
~5月22日(月)
開催場所:国立新美術館 企画展示室1E
東京都港区六本木7-22-2
開館時間:10時~18時(金曜日は20時まで)
※4/29(土)~5/7(日)は毎日20時まで開館 (入館は閉館30分前まで)
休館日:火曜(5/2は開館)
TEL:03-5777-8600
入場料:1600円
http://kusama2017.jp/