これまでイヤホンを使う習慣がなかった人こそ、これを試してみるべきかもしれません。わずか4gの小さな機器を両耳に差すだけです。音楽を流してしばらく好き勝手に過ごしていると、いつもと同じ生活なのに、モノの見え方が変化しているのに気づくでしょう。あたかも、BGMに包まれた映画の世界に入り込んだかのよう。家で起き抜けのパジャマ姿のまま植物に水をやり、脱いでシャワーを浴び、足早にキッチンに向かってフライパンでベーコンを炒め、服を着ながら髪をドライヤーで整える、そんな忙しい最中でも騒音や雑音が消え失せ、頭に響くのはお気に入りの音楽。オフィスでは、ふと席を立ちコピー機に向かうとき、コーヒーを注ぎに行くとき、イヤホンを耳から外す必要も、接続したスマホやMP3プレイヤーをポケットに入れることもなく行動できます。いつでもどこでも音楽が寄り添ってくる不思議な感覚は、付けていることを忘れがちなこのイヤホンならではの体験です。
2015年誕生の新進メーカー「ERATO(エラート)」から、今年9月に発売された「Apollo7(アポロセブン)」。左右のハウジングが独立した、完全ワイヤレスタイプのBluetooth接続仕様です。電波が届く範囲なら、行動の自由が妨げられません。同様の製品はまだ数が少なく、ワイヤレスといえば左右を同時再生させるために、ハウジングをコードでつなげているものが主流。「音楽が流れる耳栓」とも言えるApollo7には、ハウジング同士を電波で接続する高度な技術が用いられています。満充電で最大3時間音楽を聴け、バッテリー内臓の小型ケースに収納することで自動的に補充電され、合計最大9時間の使用が可能。
特長的な機能は、マイク搭載でハンズフリー通話に対応していること。そして、本体にリモコンボタンがあり、電源のオンオフ、曲の送り、一時停止、音量の上げ下げ、通話対応などができること。さらに、ナノコーティングにより、スポーツの汗やシャワーの水しぶきに耐える防水性能があること。これほど多くの機能を超小型のボディに詰め込んだ完全ワイヤレスイヤホンは、ほかに例がありません。
デザインが美しく、ワイヤレス特有の音切れが少なく、音質面も他製品と比べて良好とされるApollo7。ただし、発展途上にあるこのジャンルの他社製品とも共通する惜しい点が幾つかあります。まず音質は、同価格帯の一般的な高級イヤホンと同等ではありません。メリハリのある豊かでクリアな音空間とは言い難いのが正直なところです。再生機器との音ズレも起こります。ゲームや動画視聴でスマホ画面と一致させたい人は注意が必要です。主に左右をコネクトするペアリングに起因する現象ですから、対処方法として片耳だけ使えばタイムラグをごくわずかに抑えられます。
なによりも、落下や紛失が心配という人も多いでしょう。Apollo7のパッケージには、耳の内側にフィットさせるパーツの「スタビライザー」が同梱されており、本体に取り付ければ安定使用できます。イヤーチップも、ウレタンとシリコンの大中小サイズが用意され、自分に合うものを選択できます。多少の難はあっても、それを補って余りある体験をさせてくれる意欲的なイヤホンです。パソコンに接続して、川のせせらぎや鳥の声を流して仕事の疲れをほぐしたり、アイディアしだいで使い方が広がる新しいデバイスです。(高橋一史)
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