フランス革命で処刑台の露となり消えた、悲劇の王妃マリー・アントワネット。そんな彼女の半生を描く展覧会が、現在森アーツセンターギャラリーで開催中です。生涯の大半を過ごしたヴェルサイユ宮殿の学芸員チームの監修の下、まさに集大成ともいえる大展覧会となっています。
そもそもマリー・アントワネットは、オーストリア皇女として誕生。14歳でのちにルイ16世となるフランス王太子と結婚し、華やかさを極めたフランス王朝のまさに”顔”ともいえる存在でした。しかし1793年に、37歳の若さでこの世を去りますが、その短く悲劇的な一生は、歴史上においても極めてドラマティックな生涯でした。この展覧会では、入念に選び集められた200点以上の美術品と資料を通じて、王妃の生涯を辿るというものです。確かな審美眼をもっていた王妃が、いかに美術史に寄与したのかも浮き彫りにされています。またヴェルサイユ宮殿内にある王妃のプライベート空間「プチ・アパルトマン」の浴室、図書館、居室を、当時の装飾や実際に使われていた家具、映像などとともに原寸大で再現され、当時の王朝の様子を感じとれる充実の内容となっています。
その中でも特に注目したいのが、スイスの高級機械式時計「ブレゲ」との世紀を超えた物語です。マリー・アントワネットは、天才時計師として知られる初代アブラアン-ルイ・ブレゲの熱烈なファンでもありました。実際にパリのヴァンドーム広場にあるブレゲの本店ブティックの2階に収蔵されている台帳によると、王妃の名が最初に登場するのは夫ルイ16世よりも一年早い1782年のこと。それは、リピーター機構とカレンダー機構とを備えたペルペチュエル時計でした。宮廷のアイドルであり、ファッションリーダーでもあったマリー・アントワネットですが、実際にその「ブレゲ」の時計の素晴らしさを語って回ったとされています。そんな初代ブレゲに1783年、驚くべき注文をマリー・アントワネットは行います。希望するのは、「あらゆる複雑機構を最新のデザインに収めた世界最高の時計」。しかも納期は無期限、料金は無制限という破格のオーダー。ブレゲはこの新たな領域に挑戦する機会を得、すぐさまに世界一複雑な時計の製作に取り掛かります。その時計こそが、「ブレゲNo.160」です。
注文から44 年、王妃の死から34 年を経て時計は遂に完成します。しかし、その後も数奇な運命をたどり、数々の伝説を書き綴ることに。1983 年の美術館からの盗難事件と2007 年の奇跡的な発見は、とりわけ有名です。そしてマリー・アントワネットとブレゲとの深い関係は、現代にも継承されています。2005年には、1983年に盗難にあい幻の存在となった「ブレゲNo.160」の再現に挑むことに。こうして完成したのが「ブレゲNo.1160」なのです。完成したのは2008年で、しかもその前年には「ブレゲNo.160」が発見されたこともあり、世紀を超えた運命を感じずにはいられません。実は去る11月2日と3日の2日間だけ、この「ブレゲNo.1160」が森アーツセンターギャラリーにて特別展示をされていたのですが、マリー・アントワネットとブレゲとの後世への遺産ともいえる、素晴らしい展示となっていました。
またこの展覧会に合わせて、ブレゲは2本のスペシャルピースを製作しています。ブレゲ ブティック銀座で販売されているレディスウォッチは、王妃が愛したバラやリボンが可憐に彩るデザインとなっています。そんな世紀を超えたストーリーを知れば、このマリー・アントワネット展がより特別なものになることでしょう。(Pen編集部)
『ヴェルサイユ宮殿《監修》マリー・アントワネット展─美術品が語るフランス王妃の真実─』
開催期間:開催中~2017年 2月26日
開催場所:森アーツセンターギャラリー
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
TEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)
営業時間:10時~20時(火は17時まで) ※入館は閉館の30分前まで
会期中無休
料金:一般当日¥1,800
www.ntv.co.jp/marie
ブレゲ ブティック銀座
東京都中央区銀座 7-9-18 ニコラスGハイエックセンター 3F
TEL:03・6254・7211
営業時間:月-土 11時-20時(月~土)、 11時~19時(日、祝日)
不定休
www.breguet.com/jp