コニャックの王「ルイ13世」を知っていますか。フランス・コニャック地方の特級畑、グランド・シャンパーニュ地区で収穫された最高品質の葡萄のみを使った「グランド・シャンパーニュ規格」のコニャックは、全コニャック製品のうちのわずか1パーセント以下の生産量にすぎません。そのなかでも樹齢100年以上のオーク樽の中で40年から100年の熟成を重ねた1200種類ものオー・ド・ヴィー（原酒）をブレンドして創られたのが「ルイ13世」です。1874年に誕生して以来、コニャックの王として君臨し続けています。

今春、フランスを代表する老舗ブランド「エルメス」、「ピュイフォルカ」、「サンルイ」の三社とコラボレーションし、世界で３点しか創られない究極のオーダメイド「L’ODYSSÉE D’UN ROI（ロディセー・ダン・ロア／王の旅路）」がサザビーズオークションに出品されると発表されました。これは、エルメス社の最高級の皮革を使ったトランクの中に、セラーマスターのバティスト・ロワゾーがこのプロジェクトのために特別にブレンドした「ルイ13世」と、1820年創業の銀食器ブランドのピュイフォルカ社によるアールデコの銀細工が施されたホワイトゴールドのピペット、ヨーロッパ最古の王立クリスタルメーカーのサンルイ社のデキャンタ＆グラス４脚がセットされたもの。デキャンタには、それぞれオークションに出品されるヨーロッパ、アメリカ、アジアの３大陸の19世紀当時の地図が手作業でエッチングされています。すべて熟練した50人以上の職人が1,000時間以上費やして創った究極の芸術品です。

2016年9月10日、ニューヨークで行われたサザビーズオークションに最初の１点が出品され、注目のなか134,750ドル（約1400万円）で落札されました。続いて10月1日の香港では1,470,000香港ドル（約1900万円）で落札 、最後の１点は11月16日にロンドンで出品される予定です。これらのオークションの売上はすべて、映画監督マ―ティン・スコセッシが主宰する歴史的な映画の保全活動を行っている「The FILM FOUNDATION」に寄付されます。映画という貴重な遺産を次世代に継承していくというこの団体と、完成には4世代にわたるセラーマスターたちの職人技と１世紀以上もの熟成の時が必要な「ルイ13世」。両者には「未来への継承」という哲学が共通しています。手にした瞬間から究極の時間とクラフツマンシップを体感できるコニャック、それが「ルイ13世」なのです。（脇本暁子）