―サイドスロープが出合う、クリエイションの精神 01―
脇坂 今月から、さまざまな分野でつくり手として活躍する方々と「モノづくり」について語る、対談連載を始めます。第1回目は、僕が長い間通っている恵比寿の日本料理店「日本料理 雄」の雄さんがお相手です。いつも通りの感じで飲みながらいきますか。
佐藤 いきましょうか(笑)。また熱くなっちゃいますね。
脇坂 雄さんと僕、本当に話が合うなぁと、いつも思うんですよ。
佐藤 真剣にモノづくりをしている者同士ですから。脇坂さんはニット、僕は料理。作品をつくるのは一緒です。
脇坂 雄さんの料理って、まずは美しい。そして、いつも絶対においしいんですよ。安定しているのがすごい。安定しない店もあるじゃないですか。他の店に食べに行くこともありますか?
佐藤 ありますよ。気になる店は自分の目と舌で確認するようにしています。
脇坂 実際に食べてみないと、ですよね。僕のニットも、実際に着て初めて肌感覚でわかることがあると思います。
佐藤 でも、最近はネットの評価だけで、よい悪いを判断する人が増えている気がして、とても残念です。
脇坂 自分の感性に自信がもてない人、人の評価が気になる人が増えているんじゃないでしょうか。自分の感性で判断するには、普段からよいモノに触れないと。そのために、僕は「服育」が必要だと思っているんです。
佐藤 服育……新しいですね。
脇坂 いまの若い人は、ファストファションで満足してしまっていて、それが全部悪いわけではないけれど、本物の綿やカシミアの着心地のよさを知らない。それを伝えていくのは、アパレル業界の使命です。売れればいい、では済まされないと思うんです。
佐藤 本物のよさを伝えることは大切ですね。僕も農林水産省の食育プロジェクトに参加していて、小学校で給食をつくっているんですよ。
脇坂 それはすごい。その給食、僕も食べたいです(笑)。
佐藤 最近ではプレゼンテーションが華やかな料理が人気ですが、僕は、日本料理は奥深さが大切だと思うんです。見た目は地味でも、ていねいにひいた出汁の味とか、本物のおいしさを味わっていただきたくて。
脇坂 僕がつくるサイドスロープの服のタグには、ブランド名が入っていないんです。ロゴマークだけ。主張はしないけれど、ここの服はとても着心地がいいな、ということに、実際に着てみて気づいてほしい。そんな想いを込めています。雄さんも僕も、そうして本物のよさを知る人を増やしていきたいですね。(写真:江森康之 文:吉田桂)
サイドスロープ SIDE SLOPE
●2005年に誕生した、ファストファッションでもなくコレクションブランドでもない、ニットファクトリーブランド。デザイナーは、数々のブランドの企画に黒子として携わってきた脇坂大樹が務めている。「遊び心のある大人を満たすニット」をテーマに、洋服の価値に対して合理的な値付けや、資源の再利用なども視野に入れた商品を展開。現在では国内に留まらず、海外への発信も強めている。
脇坂大樹 サイドスロープ デザイナー
●1972年、大阪府生まれ。企業のパタンナーやデザイナーを務めたのち、ニットデザイナーとして数々のブランドの企画に携わる。2005年に「サイドスロープ」を立ち上げ、工場の技術力や素材の特徴を熟知したテクニックを生かし、新たな発想をもってモノづくりに挑戦している。
佐藤雄一 日本料理 雄 店主
●1975年、茨城県生まれ。高校卒業後、箱根「強羅花壇」をはじめ、都内の日本料理店や寿司店などで腕を磨き、2006年に「日本料理 雄(ゆう)」を開業。感謝の気持ちを大切に、素材そのものの美味しさに向き合う。地元茨城県の食のアンバサダーも務める。
日本料理 雄
東京都渋谷区広尾1-15-3
クオリア恵比寿パークフロント 1F
TEL:03-5793-8139
営業時間:12時~14時(ランチ) 18時~23時(ディナー)
不定休
www.ebisu-yu.com
問い合わせ先/フォワード・アパレル・カンパニー
TEL:03-5423-6451 www.sideslope.jp