東京・初台の東京オペラシティ アートギャラリーでは、オランダを代表する3人のデザイナーたちの展覧会「オランダのモダン・デザイン リートフェルト/ブルーナ/ADO」が、開催中です。
まずひとりめのデザイナーは、ヘリット・トーマス・リートフェルト(1888-1964)。家具職人からスタートして、数々の名作椅子を生み出し、そして建築家として大成、世界遺産にも登録されている《シュローダー邸》をデザインして、20世紀の建築やインテリアのあり方に大きな影響を与えました。彼の椅子は、その名は知らずとも、誰もがどこかで目にしたことのある作品です。そして、もうひとりはディック・ブルーナ(1927-)。言わずと知れた「ミッフィー(うさこちゃん)」(オランダ語で「ナインチェ」)の生みの親です。シンプルな線と色、最低限の要素で描かれた“うさぎの女の子”は世界中で愛されていますが、実はほかにも多くのグラフィック・デザインを手掛けています。日本でも人気の推理小説、シムノンの「メグレ警部シリーズ」などペーパーバックの表紙もブルーナの仕事です。最後はオランダの国民的玩具シリーズADO(アド)。こちらは本邦初公開の作品たちです。
デザイナー コー・フェルズー(1901-1971)の指導のもと、サナトリウムでの患者の治療法の一環として行われた製作活動から始まりました。「Arbeid door Onvolwaardigen(障がい者による仕事)」の頭文字です。社会貢献活動にとどまらず、その高いデザイン性で、オランダの子どもたちのハートをつかんだのです。
これらの貴重な作品はもちろん、写真、スケッチ、動画、図面から関連資料までを含めた総出品数400点超で魅せる、オランダのモダン・デザインの粋。今回の展示で最も楽しいのが、その空間のつくり方です。
デザイナーごとにまとまりながらも、ところどころで作品が混在するユニークな展示は、リートフェルトの椅子を見て、ADOのおもちゃを楽しみ、ふと壁をみるとブルーナのポスターが・・・と、散歩をするように作品や資料に触れながら、オランダのモダン・デザインを、感覚として捉えられるようになっています。
絶妙に重なりながらも、それぞれに異なる時代を生き、異なる分野で「デザイン」を極めた3者。しかし、そこにある視点は、いずれも「私たちが生きることをより豊かにする」こと。造形理論はとてもクールなのに、その根幹には、人間への、生活することへの限りない愛情とあたたかさがあり、想像力と成長する可能性を信じているスタンスが見えてきます。触れる人びとの温度を忘れない、そして造形のプロセスはシンプルに、論理的に――。そんなオランダモダン・デザインのスピリットに触れてみてはいかがでしょうか。(坂本裕子)
「オランダのモダン・デザイン リートフェルト/ブルーナ/ADO」
開催期間:~11月23日(水・祝)
開催場所:東京オペラシティ アートギャラリー
東京都新宿区西新宿3-20-2
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:11時~19時(金、土は20時まで/最終入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜 ※祝日の場合、よく火曜日
料金:一般¥1,200、大・高生¥800、中高以下無料
http://www.operacity.jp/ag/