ドレス、ベッド、靴、旅行鞄など、人々が日常の中で使用し、その痕跡や記憶を内包する素材を使って大規模な作品づくりをする美術家・塩田千春。昨年のヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展では日本館へ出品。真っ赤な糸を縦横無尽に張り巡らせ、繊細さをはらむ濃密な世界を生みだし、話題をさらいました。ベルリン在住の塩田がこのたび来日し、KAAT神奈川芸術劇場で新作を制作します。

ヴェネチア・ビエンナーレでは400kmもの赤い糸と18万個もの鍵を使い、圧倒的な空間を出現させた塩田。絡まり合う赤い糸と鍵の下には、それらを受け止めるかのように2艘の船を設置。鍵は世界中の人々から集めた古い鍵で、持ち主の記憶や思い出を宿しています。塩田はこの作品について、「人と人を赤い糸でつなぎたい」と考えていたそうです。

9月14日（水）からスタートする本展は、ヴェネチアの展示を再構成したもの。同じく赤い糸と鍵、そして新たに古い扉を使い、『鍵のかかった部屋』として展開します。どのように進化した作品となるのか期待が募りますが、今回は会場がKAATというだけあって、実験的なプログラムも開催されます。ダンサー・振付家の酒井幸菜とのダンス公演、同じくダンサー・振付家の平原慎太郎とのダンス公演、音楽プログラムではmama！milk、一柳慧など、多彩な顔ぶれが揃います。塩田の生み出す空間とさらなる芸術が絡み合う、濃密な時間。この秋必見の展覧会です。（Pen編集部）