リオ デ ジャネイロのスラム街、「ファベーラ」を舞台にした感動映画『ストリート・オーケストラ』をいまこそ見よ!

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    ブラジル映画『セントラル・ステーション』などで助監督として実績を積んできたセルジオ・マシャードが、監督を務めています。

    リオ デ ジャネイロ オリンピックが開幕して、早起きをしたり徹夜をしたりしつつ、地球の反対側にエールを送っている人も多いのではないでしょうか。オリンピックのニュースとともに耳にすることが増えたのは、ブラジルの治安の悪さや政治経済の不安定な状況を伝えるニュース。真っ先にそうした環境の犠牲になるのは、幼い子どもたちです。実話をもとしたブラジル映画『ストリート・オーケストラ』には、子どもらしい無邪気な日々や未来への希望を奪われている少年少女たちの現実が描かれています。

    舞台となっているのは、『シティ・オブ・ゴッド』などでも知られる「ファベーラ」と呼ばれるスラム街。かつては神童と称えられながらも、サンパウロ交響楽団の試験にも落ち、ヴァイオリニストとして成功をつかめずにいる青年ラエルチが、NGOが支援するサンパウロのファベーラでヴァイオリン教師の職に就くことから物語が動き出します。教室は金網で囲っただけの屋外のスペースで、生徒たちは楽器の持ち方さえも知らず、授業中に小さなことで取っ組み合いのケンカをはじめる始末。投げ出したいと思っても、生活のために見つけた仕事をすぐに手放すわけにはいきません。

    若くて志のある教師が熱血指導を繰り広げるというストーリーではないところが、この映画の面白さ。ラエルチはときには生徒たちの態度にブチギレながら何とか指導を続け、挫折を繰り返すうちに閉じ込めてしまっていた、内なる音楽への根源的な欲求や愛情を取り戻していくのです。そして子どもたちは、ギャングがすべてを取り仕切る街で生きながらも、武器ではなく楽器を手にして自分のなかの獣を静めさせる方法を知る。音楽によって、たとえ束の間かもしれなくても希望のようなものを手にする瞬間がここにはあります。

    ギャングに凄まれた夜の道で。ファベーラの片隅で。タイトル通り、ストリートで奏でられるモーツァルトやパガニーニなどクラシックの名曲たちが、感動をより深いものにしています。(細谷美香)

    主人公のラエルチ(左)を演じるのは、ブラジルの大人気俳優、ラザロ・ハーモス。

    劇中では、本作のモデルとなったスラム街の子どもたちで結成されたエリオポリス交響楽団の演奏も。

    © gullane

    『ストリート・オーケストラ』

    原題/Tudo Que Aprendemos Juntos(英題/The Violin Teacher)
    監督/セルジオ・マシャード
    出演/ラザロ・ハーモス、カイケ・ジェズース、エウジオ・ヴィエイラほか
    ブラジル 1時間43分
    配給/ギャガ 
    8月13日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
    http://gaga.ne.jp/street