特定のアート作品にインスパイアされた服や小物は、それ自体はさほど珍しいものではありません。デザイナーの仕事には刺激が必要であり、彼らがイメージを膨らませる発想源をアートに求めるのはごく当たり前のことです。ですが、フランスの老舗シューズ、「ジェイエムウエストン」が製作したローファーの場合は、まったく異なる考え方から生まれたものです。歴史的なアートと、ベーシックなシューズとを、高い次元で融合させた一足なのです。
フランス人のイブ・クライン(1928-1962)は、34歳の若さで世を去った芸術家。単色の “青” で彩った極めて特異な作風で知られています。その青は絵の具でもペンキでもなく染料であり、「インターナショナル・クライン・ブルー」という名で特許が取得された色です。アーティスティック・ディレクターのミッシェル・ペリーとジェイエムウエストンのアトリエの職人はこのたび、イブ・クラインの青をシューズにすることを試みました。天然の革という、繊細な色出しが難しい素材を使い、納得のいく色になるまでに要した月日は2年以上。できあがったスエード革と表革は、2015年に発表された新定番ローファー「ル・モック」に、新たな息吹を吹き込みました。
完成したモデル、「ル・モック インターナショナル・クライン・ブルー」は、世界限定1500足。 各国の限られた店舗でのみ販売されています。アート好きならずとも、この発色の美しさには心惹かれてしまうはず。強い日差しやリゾート地がよく似合う特別なスリッポンシューズで、今年の暑い夏を優雅に過ごしてみてはいかがでしょうか。(高橋一史)
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