もう目撃しましたか? ヴィスコンティ監督、没後40年に蘇る、『山猫 4K修復版』『ルートヴィヒ デジタル修復版』』4K修復版の凄さ!

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    バイエルンの国王が没落していく様を描いた『ルートヴィヒ』。

    映画誕生から100年以上が経過した今、問題となっているのは過去作品の保存。フィルムは保存状態が悪いと経年劣化によって、再生できなくなることがあります。フィルムが腐ってしまったその状態のことをビネガーシンドロームと言って、フィルムをおさめていた缶を開けるとすっぱい臭いが漂ってくる…。そういった事態を未然に防ぎ、文化遺産とも言える映画を後世に残す活動をしているひとつが、マーティン・スコセッシ監督が主宰するザ・フィルム・ファウンデーションです。

    フィルムはいくつものコマが連なり、映写機にそれが流れていくことによって映像化されます。そのコマにおさめられている情報をほぼ完全にデジタル化するために必要になってくるのが、近年、家庭用のテレビにも採用されるようになった4Kという技術です。フィルムの1枚1枚をデジタルに変換していきゴミや傷を直していく、その膨大な工程数には約500日を要すると言われています。

    『山猫』のワンシーン。本物の貴族の館で撮影が行われた。

    1963年に公開された、ルキノ・ヴィスコンティ監督の『山猫』は、まさに“文化遺産”と言うに相応しい作品です。イタリアの国王家以上の家系に生まれ、文化教育に熱心な両親の元で育てられ、ココ・シャネル、ジャン・ルノワールとの出会いで映画に開眼したヴィスコンティ監督。『山猫』は中期の代表作にあたります。メインのロケーションとなっているのは貴族の館。それはセットではなく、ヴィスコンティ監督の友人が所有していた本物だと言います。貴族の裏表、刹那を描いた芸術的な映画、アラン・ドロンやバート・ランカスターの代表作であると同時に、存在そのものが遺産である建築を観ることができる貴重な作品なのです。さらに、修復作業を担ったハリウッドのソニーピクチャーズ傘下のカラーワークスがわずか4カ月で仕上げたというから驚きです。

    修復版が同時上映されるのは、約4時間もの超大作である『ルートヴィヒ』。あまりの長時間故、1972年の公開時に第三者の手によって144分に短縮されたのは有名なエピソードです。ヴィスコンティ監督が望む形でお披露目されたのは、監督が亡くなってから4年後のこと。今回はもちろん、フルバージョンでの上映となります。『山猫』同様、絢爛豪華な建築を観ることができるだけでなく、精神的な障害を来してしまうバイエルンの国王、ルートヴィヒ役を務めたヘルムート・バーガーの迫真の演技も見事としか言いようがありません。是非、『山猫』と『ルートヴィヒ』を合わせてご高覧下さい。(大隅祐輔)

    「ヴィスコンティと美しき男たち アラン・ドロンとヘルムート・バーガー」

    上映期間:~6月10日(金)
    上映場所:YEBISU GARDEN CINEMA(東京都渋谷区恵比寿4-20-2)

    www.facebook.com/visconti110

    全国順次公開予定。