山形・寒河江市で1932年に創業した「佐藤繊維」。糸の紡績からニット製品の企画、製造まで手がける日本屈指のメーカーです。その名前は世界にも知られ、欧州をはじめとする有名メゾンから指名を受けるほど。昨年4月には工場として使っていた石蔵を改造し、セレクトショップ「GEA(ギア)」をオープン、大きな話題となりました。そんな「佐藤繊維」が、世界に誇る技術を集結させ、天然原料のもつ個性を最大限に活かした究極のニットブランド「991(キューキューイチ)」を今秋デビューさせます。この「991」は、今年2月に世界最大のメンズウエア見本市「ピッティ・イマジネ・ウオモ」で日本に先駆けて展示され高い評価を得ましたが、先日、「GEA」でもローンチイベントが開かれました。
「佐藤繊維」の4代目社長・佐藤正樹さんは、良質な原毛を求め、世界中のこだわりをもった農場を回り、独創的な糸づくりをしてきました。古い機械を使って、1gの糸から52mの長さの極細のモヘア糸を紡ぐことにも成功しています。「991」は、天然ウールそれぞれのもつ個性を最大限に発揮した糸づくりを行い、パターン、成形、縫製までのすべての工程にこだわったニットコレクションで、世界中のウールを熟知する佐藤社長だからこそつくり得た、渾身の作品と言えます。ブランド名の「991」はポストコード、つまり山形県寒河江市の郵便番号で、寒河江からファッション文化を世界に発信していこうとする佐藤社長の地元愛が感じられます。
Photographer _ YUICHI AKAGI
Stylist _ MASATAKA HATTORI
Hair&Make _ YAMA(INTENTION)
Lighting _ MICHINARI MARUI
世界中から厳選したウール素材と革新的なパターン
「991」は“究極のニット”と謳うだけあって、とてもシンプルでベーシックです。ローゲージのコレクションは、英国羊毛を使い、脱色、染色を行わず、手紡ぎの風合いを活かしたセーターやマフラー、ニットキャップが揃います。ミドルゲージは、高い山脈に育つキャメルやヤクから採れる原毛を柔らかく軽やかに編み上げたもので、セーターからブルゾンまで展開。ハイゲージでは、羊毛の特性と風合いを活かしながら、塩素を使わずにウォッシャブル、つまり洗えて、毛玉ができないという独自の加工法を開発し、インナーとしても着られる肌触りのいいニットウエアやソックスを企画しました。さらにパターン=型紙の革新にも取り組み、ニットウエアでは困難だった立体的なパターンを開発。特に、カシミアなどの極上素材を使ったニットジャケットの出来栄えが秀逸で、独自の編み立てと縫製技術により、身体を包み込むようなナポリスタイルに仕上げられています。ラペル=襟の返りも布帛で仕立てたような美しさです。世界中のグローブを研究し完成させたニットグローブは、手のフォルムを立体的に再現しました。指が自在に動かせる、世界に類を見ないグローブです。
「これまで日本のブランドが世界で評価されてきたのは、主にデザインに関してです。私はクオリティや“つくり”そのもので、海外でも高い評価を受けられるように、このコレクションをつくりました。メイド・イン・ジャパンのブランドでありながら、デザイナーの売り場ではなく、ヨーロッパのエレガントでクラシックな売り場に並ぶような上質な商品にしたいと思います」と語る佐藤社長。その言葉からは、このブランドに賭ける熱い想いと自信が伺えます。「991」のコレクションは、「ユナイテッドアローズ」「バーニーズ ニューヨーク」「エストネーション」「ストラスブルゴ」「アダム エ ロペ ワイルド ライフ テーラー」「阪急有楽町メンズ」などで7月から販売されます。(小暮昌弘)
佐藤繊維 公式サイト
http://satoseni.com/