タトゥーやバイク、ヴィンテージカーなどのカウンターカルチャーの世界に造詣が深いフォトグラファー、鈴木嘉樹氏の写真展「UNION」が5月18日(水)まで、千駄ヶ谷のスロープギャラリーにて開催されています。
この展覧会は200ページを超える同タイトルの写真集発表を記念してのもので、鈴木さんが10年近くかけて撮影した写真が展示されています。20代前半からアメリカのカルチャーに憧れていたという鈴木さん。ロスに初めて行ったのは、カリフォルニアの文化が好きでサーフィンもできる、という若者らしい単純な理由だったそう。
「最初にロスに降り立った時の印象が強烈でした。走っている車も人の陽気さも、人々の生活も。僕が思ったのは貧富の差も当然、日本よりもあって。そんな何もかもが衝撃的で、憧れている国を見て感動したんです。それからプライベートで訪れているうちに仕事を頼まれるようになり、『仕事半分』みたいな感じで何度か行くようになりました。本格的にこういう人たちの写真を撮ろうと思ったのが2006年くらい。いまから約10年前です。もともと興味があるタトゥー・アーティストやバイカー、サーファー、アーティストたちの写真なんですが、被写体は探したというよりも、出逢ったという感じ。仕事で会っているうち仲良くなり、プラベートの写真を撮らせてもらうようになったんです。ポートレートに切り取られた人々は実にアクが強くて個性的。こういう世界に縁も興味もなかったら、恐れすら感じるかもしれません」と鈴木さん。
「最初は僕も怖かったんですが、親しくなると意外にみんな良くしてくれました。『何しに来たの?』と聞かれて、『このカルチャーがすごく好きなんです』と答えると、『そうか!』って喜んでくれて、そういう風に趣味が同じことで徐々に親しくなっていきました。そうするとアメリカの人、特に西の人たちは『じゃあ、うちで遊んで行きなよ』など、すごくウェルカムなんです。本当に僕を地元の友達みたいな感覚で扱ってくれ、すごく緩い感じですぐに仲良くなりました」
写真集にしたいと思ったのはごく最近だそう。
「みんな、カテゴライズしたりテーマを決めたりして写真集を作ると思うんですけど、僕はそうではなく、アメリカで出逢った人で面白かったら撮っていく感じです。好きなものが同じなら言葉や人種の壁を超えても瞬時に同じ世界を共有できるし、すぐ親しくなれるんです」
今回は本の装丁にもこだわったそう。
「特に表紙にはこだわりました。京都に手刷りで布にプリントしてくれる凄い人がいることを聞き、ご縁があってお世話になりました。何度も試行錯誤しながらモノクロ写真を反転したものをプリントしてもらいました」
展覧会と写真集のタイトルである『UNION』は、繋がりや絆を感じさせる言葉でもあります。ディープでコアな出逢いと、彼らと時間をかけて大切に結んできた絆。時にはワイルドに荒々しく、時には繊細で切なく。鈴木さんの写真に切り取られたアメリカの人々の日常は、リアルでありながらもまるで映画の一幕のようにストーリーを秘めており、見るものの想像力をかきたてるのです。(大嶋慧子)
UNION
会期:2016年4月15日(金)~5月18日(水)
会場:スロープギャラリー
東京都渋谷区千駄ヶ谷2-9-1-B1
開廊時間:13時~19時
閉廊日:土、日、祝
www.buenobooks.com/slopegallery/