暗く黒い画面に目を凝らすと、うっすらと見えてくる裸、樹形、風景……。写真家・野村佐紀子の個展「もうひとつの黒闇」が銀座で開催されています。

展示されるのは、先行するシリーズ「黒闇」のイメージを用いながら、ソラリゼーションというモノクロ写真の白と黒が反転する技法で制作した実験的な作品。奥行きを失い、輪郭がゆがみ、強調された写真は、普段見ている世界とは別のシュールな姿をあらわにします。抽象化されたイメージは、記憶の奥深くに眠ったさまざまな感情を呼び起こすようです。

野村佐紀子は、湿度や体温を感じるような男性ヌードやポートレートに定評があり、荒木経惟のアシスタントをしていたことでも知られます。その写真には、被写体との関係から生まれる感情の揺らぎ、記憶、心情といったものが映し出され、見るものを揺さぶります。

今回の作品は、昨年フランスにて開催された「Another Language 」展(アルル国際写真フェスティバル)に出展し、称賛されたもの。展覧会に併せ同名の写真集「Another Black Darkness」（600部限定／サイン＆ナンバー入り）も刊行されます。

自分の中のもうひとつの世界を旅するような不思議な感覚をあなたも味わってみませんか。（佐藤千紗）