大輪の花を咲かせるシャクヤク、太陽のように熟れたカラスウリ、ピンクの花を広げるネムノキ......。どれもこれも、デジタルでは表現できない絶妙な色合いで、思わず手を触れたくなるほど生き生きとしたタッチで描かれています。しばらく見ていても飽きる事のない、まるでアートのように美しく描かれた数々の植物は、人のカラダを治療するための漢方薬というから驚きです。
3月3日から、京橋の「LIXILギャラリー」で開催されている『薬草の博物誌 -森野旧薬園と江戸の植物図譜-』では、約90点もの美しい植物図譜に出合えます。さらに会場では、江戸時代から続く、現存する日本最古の私設薬草園「森野旧薬園」について、写真や映像などで知識を深めることができます。約300坪の広さを誇るこの「森野旧薬園」には、いまも250種ほどの薬草や観賞用植物が生い茂り、江戸時代からの栽培方法で植物が育てられています。
人類において貴重な薬園の存在と、さまざまな薬草に焦点を当てるこの展覧会。江戸の初期から後期、中国から伝わった「本草学」が、日本独自の「近代植物学」へと移り行く植物図譜の変遷もとても興味深いものです。美しいだけではない、その植物画に息づく江戸時代の温故知新の知恵までも、垣間見ることができるのです。(須賀美季)
『薬草の博物誌 -森野旧薬園と江戸の植物図譜-』
開催期間:~5月21日(土)
開催場所:LIXILギャラリー 東京
中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル LIXIL:GINZA2F
TEL: 03-5250-6530
開館時間:10時~18時
休館日:水曜日
入場無料