“まるでアート”な植物図譜に隠された、知られざる薬草の物語に出合う。

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    カラスウリTrichosanthes cucumeroidesウリ科。根は「王瓜根(オウガコン)」または「土瓜根(ドカコン)」と称し、中国では利尿・瀉血薬として黄疸や下血の治療に用いる。 『本草図譜』(岩崎灌園著、1830~44 年の刊に彩色を加えて発刊した大正版)より 所蔵:高知県立牧野植物園 撮影:佐治康生

    大輪の花を咲かせるシャクヤク、太陽のように熟れたカラスウリ、ピンクの花を広げるネムノキ......。どれもこれも、デジタルでは表現できない絶妙な色合いで、思わず手を触れたくなるほど生き生きとしたタッチで描かれています。しばらく見ていても飽きる事のない、まるでアートのように美しく描かれた数々の植物は、人のカラダを治療するための漢方薬というから驚きです。

    3月3日から、京橋の「LIXILギャラリー」で開催されている『薬草の博物誌 -森野旧薬園と江戸の植物図譜-』では、約90点もの美しい植物図譜に出合えます。さらに会場では、江戸時代から続く、現存する日本最古の私設薬草園「森野旧薬園」について、写真や映像などで知識を深めることができます。約300坪の広さを誇るこの「森野旧薬園」には、いまも250種ほどの薬草や観賞用植物が生い茂り、江戸時代からの栽培方法で植物が育てられています。

    人類において貴重な薬園の存在と、さまざまな薬草に焦点を当てるこの展覧会。江戸の初期から後期、中国から伝わった「本草学」が、日本独自の「近代植物学」へと移り行く植物図譜の変遷もとても興味深いものです。美しいだけではない、その植物画に息づく江戸時代の温故知新の知恵までも、垣間見ることができるのです。(須賀美季)

    「ネムノキ」。マメ科。樹皮は「合歓皮(ゴウカンヒ)」という生薬。『草木花実写真図譜』(川原慶賀著、明治初期刊)より。1836 年に刊行された『慶賀写真草本』の改題再刊本。和名と洋名を両方記し、その特徴や効能を書き込んでいる。

    「クルミ科クルミ属」。植物の一種。『花彙』(島田充房・小野蘭山著、1759、1765 年刊)より。白黒を巧みに使い分けるメリハリの効いた画面構成が特徴。

    『薬草の博物誌 -森野旧薬園と江戸の植物図譜-』

    開催期間:~5月21日(土)
    開催場所:LIXILギャラリー 東京
    中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル LIXIL:GINZA2F
    TEL: 03-5250-6530
    開館時間:10時~18時
    休館日:水曜日
    入場無料