夏目漱石、川端康成、小林秀雄など、明治以来、鎌倉には文士たちが集い、創作の舞台としてきました。そうした鎌倉にゆかりのある作家が日々の暮らしの中で使ったモノを集めた展覧会、「作家 身のまわり」が鎌倉文学館で開かれています。
そばに置いて、愛でたものたちからは、作家の人柄や作品世界が色濃くにじみでます。大佛次郎の猫の置き物、里見弴のねずみの根付、小津安二郎の椿の湯呑、川端康成の座卓など、高価で値打ちのあるものというより、どこかほっとする味わいのものも多いよう。厳しい創作の傍らにいて、作家を励まし、なぐさめるものだったからでしょうか。ほかにも、夏目漱石旧蔵の掛け軸や吉屋信子の着物、作家たち愛用の万年筆なども展示されます。
鎌倉文学館の建築は、旧前田侯爵家別邸だった西洋館。三島由紀夫の名作『春の雪』の舞台にもなりました。歴史と趣のある館内や庭園をそぞろ歩けば、文学の世界に浸れること請け合い。本館からは湘南の海も見渡せ、新春のお出かけにもぴったりです。同じ鎌倉には、1月末で閉館する、坂倉順三設計のモダニズム建築の傑作「神奈川県立近代美術館 鎌倉館」もあります。合わせて訪れて、文化が花開いた古都の情緒を楽しむのはいかがでしょう。(佐藤千紗)
作家 身のまわり
開催期間:~4月17日(日)
開催時間:9時~16時30分(3月〜4月は17時まで)※入館は30分前まで
休:月(祝日は開館)
開催場所:鎌倉文学館
神奈川県鎌倉市長谷1-5-3
TEL:0467-23-3911
入館料:一般¥ 300
http://www.kamakurabungaku.com/