生き方を教えてくれる、映画「きっと、星のせいじゃない。」

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    主人公のふたりを演じるシャイリーン・ウッドリーとアンセル・エルゴートの瑞々しい演技が素晴らしい。特にアンセル・エルゴートの素朴ながら溢れるような表現力には、本作のみならず今後とも注目したいところだ。脚本はアメリカのベストセラー小説『さよならを待つふたりのために』を元に、『(500)日のサマー』を手がけたスコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバーが担当している。

    主人公はガンに冒されたふたりのティーン。彼と彼女は次第に恋に堕ちるのですが……。

    と、書くと「ありがちな」物語しか連想できなくて観る気が失せるでしょう。この物語が「ありがち」なのは否定できません。けれども、それでも観てほしいのがこの『きっと、星のせいじゃない。』なのです。本作が素晴らしいのは、我々の時間が「限られている」ことに気付かせてくれることです。それは死に直面する物語すべてに共通することですが、この映画では若いふたりがその限られた時間をどう過ごしていくか、どう哲学的な意見を交わし、深めていくかが見所です。映像も物語も、愛らしく、優しく展開してゆきます。同時に、現実の厳しさや冷たさがきちんと描かれていることが、この映画の良さを引き立てます。

    英語表現で”ファーストワールド・プロブレム”という言葉があります。コンピューターのヴァージョンが古くて検索が遅くイライラするとか、オーダーした食べ物が思った内容と違ってガッカリして残してしまうとか、「ファーストワールド(先進国)」の豊かさゆえの問題を表すもので、反対の言葉としてそれらコンピューターも食べ物もないという根本的な問題を意味する”サードワールド・プロブレム”というのがあります。そこから連想すると、病気ではない、健康な身体をもった人の物語を1st people‘s narrativeとするならば、ガンに冒されたふたりの物語は3rd people’s narrativeと言えるかもしれません。けれども、この映画を通してわかることは、豊かであり恵まれているゆえに、無駄にしてしまうこと、幸せから遠ざかってしまうことの方が日常的であること。限られた時間や世界だからこそ、凝集した幸せが実現できるという現実もあること。それら二つの事実がこの世には存在することを教えてくれます。さて、今日からどう生きていこうか? 豊かであることを無駄にせず、幸せな時間を過ごしてほしいものです。(Pen編集部)

    『きっと、星のせいじゃない。』
    監督:ジョシュ・ブーン
    出演:シャイリーン・ウッドリー、アンセル・エルゴート
    2014年 アメリカ映画 2時間6分 配給:20世紀フォックス映画
    2月20日(金)~TOHOシネマズ日本橋ほか全国順次ロードショー
    kitto-hoshi.jp