日本の自動車文学を創造した、小林彰太郎さんを知っていますか?

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    創刊号でメルセデス・ベンツ300SLを取材する小林さん。1962年当時におけるこのクルマは超高級モデルで、庶民にとっては宇宙船のような手の届かない存在だった。

    雑誌『CAR GRAPHIC』を創刊した小林彰太郎さんをご存じでしょうか? 日本の自動車文化の黎明期でもある1962年に日本初の本格的な自動車雑誌を企画し、創刊した人物です。60年代の日本の自動車産業はまだまだ、世界に比べて遅れている時代。そんなときに超高級車のメルセデス・ベンツのスポーツカーをはじめ、ポルシェ、ジャガーなど名だたる名車たちのハンドルを実際に握って、そのモデルの操縦感や居住性、乗り心地などをテストし、いわゆる日本の自動車試乗記の礎をつくりました。惜しくも昨年の10月に他界されましたが、現在の自動車業界に多大なる影響をもたらした人物です。そんな小林さんの試乗記の名作選が出版されました。

    本書『小林彰太郎名作選 1962-1989』は、『CAR GRAPHIC』創刊号の目玉だったメルセデス・ベンツ300SLの試乗記から、1980年代末のバブル期に輸入されたベントレーまでの傑作試乗記をまとめたもの。没後1年のいま発表されました。試乗モデルを説明する文章は、あるときはかっちりしたドキュメント調、また別のときには優雅な文学調などさまざまで、自動車にあわせた多彩な文体に驚きます。姿勢のよかった生前の小林さんのように、背筋をピンと正してして読みたい本です。(Pen編集部)

    同じくメルセデス・ベンツ300SLの走行シーン。当時は村山にあるテストコースで自動車をテストしていた。

    長期テスト車のロータス・ヨーロッパで富士スピードウェイを訪れたときの写真。自らつなぎを来て愛車の整備をするほど自動車に精通していた。

    『小林彰太郎名作選 1962-1989』 カーグラフィック ¥2,300