デイヴィッド・ホックニーのスタイルを特徴づける、鮮やかで多彩なソックス

デイヴィッド・ホックニー──。ポップアートの旗手として1960年代から活躍し、現在でもiPadを使いこなして作品を発表し続ける、まさに美術界の“生きるレジェンド”だ。作品と同じく、本人もお洒落なアーティストとして知られる。彼の着こなしや作品とのかかわり、愛用する“名品”との関係を解き明かす。

ワークウエアを得意とするブランドらしい、やや肉厚のリブ編み。素材はウール60%とナイロン40%のミックスで、高い保温性と耐久性と備えている。足裏部分はパイル地で、クッション性もあるため快適。イギリスで生産されている。¥2.970(税込)/ヤーモ
ウォーホルやバスキアに代表されるように、ポップアートというとアメリカをイメージする人が多いだろう。しかし、ポップアートの流行は実はイギリスの方が早かった。「ブリティッシュ・ポップ」と呼ばれるアート運動が1950年代前半に起こり、ホックニーなどが参加した61年の「ヤング・コンテンポラリー展」で絶頂期を迎え、ポップアートの中心地はやがてアメリカに移っていったという。
『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』(2018年製作)という、イギリスの60年代を描いたドキュメンタリー映画がある。監督はデイヴィッド・バティ。ナビゲーターに俳優のマイケル・ケインを起用、製作にもケインが関わっていた。「スウィンギング・ロンドン」と呼ばれた60年代のポップアートから音楽、ファッションをまとめた作品で、ケインは「ポップアートがロンドンを様変わりさせた」と断言する。映画には若き日のホックニーも登場し、「なんでも利用した。紅茶の箱も使った」と。『空想ふうなスタイルのティーペインティング』(1961年)などの作品が生まれた背景を語り、「絵に落書き風も描いた。アールズコート駅のトイレで見たものみたいにね」と笑う。この作品の中で写真家のデイヴィッド・ベイリーは「俺たちはロンドンに色を持ち込みたかったんだ」と語るが、60年代のロンドンが彼の鮮やかな色づかいに大きな影響を与えたことは明らかだ。
彼自身の着こなしでも多彩な色が使われているが、それが顕著の例がソックスだ。鮮やかなブルーや得意のボーダー柄、時には左右別々の色のソックスをパンツの裾から覗かせていることもある。
中でもいちばん特徴的なのは、赤のソックスだろう。1980年代初めから彼は「絵を描くように写真を撮ることはできないだろうか?」と考え、フォトコラージュの手法で作品を次々と発表している。京都の竜安寺の枯山水での写真を使った『竜安寺を歩く』(1983年)では、赤のソックスを履いた本人の写真が何枚も効果的に使われている。
ホックニーと同じく、イギリス生まれのヤーモというブランドで赤のソックスを見付けた。1898年創業、元々はニシン漁に従事する人たちに向けたスモックタイプの上着を手掛け、やがてワークウエアやマリンウエアを揃えるようになった。現在でもイギリス国防相や有名企業のユニフォームなどの製造を依頼されているほど、イギリスでは信頼を得ているブランドだ。この赤のソックスはそんな老舗のワークブランドがつくった堅牢なモデルで、ウールとナイロンを混紡した素材を採用。いまでは希少なイギリス製で、冒険心に富んだスタイルを好むホックニーにふさわしいソックスではないか。

ソックスの足裏に大きくサイズ表記がプリントされている。ワークウェアに出自をもつブランドらしいアイデア。

ベーシックなリブ編み。足元にカジュアルなテイストを演出してくれる。

希少なイギリス製。タグにはユニオンジャックが入っている。

こちらはイギリスのレスターで1937年に創業された高級ソックス、パンセレラ。特徴はつま先の閉じがかり仕上げを、すべて手で行っているところ。70%コットン×30%ナイロンの素材を採用。薄手なのでジャケットスタイルとも好相性。¥3,190(税込)/パンセレラ
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