モノづくりの神髄を感じる、バング&オルフセンの高音質と美しいデザイン

  • 写真:青野 豊 photographs by Yutaka Aono
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モノづくりの神髄を感じる、バング&オルフセンの高音質と美しいデザイン

2つのカラーを展開。写真のゴールドトーンは、木材のニュアンスをそのまま活かした。¥198,000(税込)

デンマークのバング&オルフセン(B&O)は、いつも我々をワクワクさせてくれる。音質、操作性、そしてデザイン。カタチだけではなく触感や材質感も含めて。上質さが融合したトータルな存在感とアピアランスが大いなる魅力だ。そんなB&Oらしさが詰まった新製品、ワイヤレススピーカーが発売された。

さりげなく「新製品」と書いたが、実はB&Oでは、新製品は非常に少ない。マイナーチェンジは多々あるが、ゼロから開発された完全なる新製品はまれ。その一例が、このベオサウンド レベル。同社のミドルクラスの屋内使用カテゴリー「フレキシブル」ラインだ。その名の通り、バッテリーを内蔵し、家の中でどこに置いてもブルートゥースやワイファイの受信、再生ができる。

ベオサウンド レベルを使ってみて、B&Oは違うと感心したことが3つある。ひとつが音質だ。ブルートゥースのため、オーディオ的な意味でのハイファイは基本的に望めないが、この音はよい。低域がしっかりと再生され、中域には艶感と繊細さがあり、高域がすっきりと伸びている。一流オーディオメーカーとしての面目躍如の音と聴いた。手が込んでいるのが、置き方による音質のサステイナビリティだ。置き方として、①スピーカー面を前面にして横置きに立てる、②スピーカー面を上向きにして寝かせる、の2通りを想定。どんな置き方でも、どこで聴いても、音質変化が少ないのはさすが。

このスピーカーには4インチウーファーが2基、2インチフルレンジが1基、0・8インチツイーターが2基搭載されている。音の進み方(指向性)は、低域は広い範囲に広がるが、高域は直進する。聴き手がスピーカー面と対する場合は、全帯域のすべての情報が聴けるが、机などに横置きし、スピーカー面が上を向くと、高域はそのまま上に進み、リスナーがいる横の位置では減衰する。そこで、B&Oはセンサーでスピーカーの姿勢を常に感知。立てた時には周波数特性はフラット、寝かせると高域をブーストする仕組みを採り入れた。これにて、どんな姿勢であっても、どこで聴いても、低域から高域まで均等に聴けるようにしたのである。どこにいても音楽の感動を高音質で体験してほしいという、メーカー側の思いが伝わってくる。

デザインの素晴らしさこそ、B&Oのモノづくりの本質だ。デンマークのデザイナー、トーステン・ヴァリュアーによるデザインは、形、素材、色のすべてに同ブランドらしい高品質が感じられる。近づくと近接センサーが感知、トップのコントロールパネルが点灯し、操作後、一定の時間が経過するとフェードアウトするのも洒落ている。B&Oらしい音のよさとデザイン性の魅力が横溢する傑作スピーカーだ。

スピーカー背面に円形プラグを装着し、スマートに充電できる。合計最大約16時間のバッテリー性能をもつ。

麻倉怜士
●デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据えている。巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)がある。
※Pen本誌より転載