民間による伝説のアートスポット閉館をめぐって大論争。
シンガポール初の非営利のインデペンデント・アートセンターとして、1990年から30年にわたりローカルの現代アート、サブカルチャーのけん引役を果たしてきたザ・サブステーション。過日、建物の管理者である国家機関・ナショナルアーツカウンシルにより、老朽化した建物の全面改修のため2年間閉館することが発表され、議論を巻き起こした。
そのニュースを引き金に、改修後に建物が独占できなくなること(テナント化して多目的なアートセンターになる構想が明かされていた)に賛同できない、とサブステーションのボードメンバーが運営自体に終止符を打つとの声明を発表した。今度はその極端な決断に反発したアーティストやサポーターたちが立ち上がり、存続の可能性をめぐって論争は議会にまで持ち込まれて継続中だ。
ザ・サブステーションは、若手の表現者たちが作品を発表する場所がなかった当時、劇作家で文化擁護者であった故・クオ・パオ・クンが、その名の由来とおり放置されていた20世紀初頭の変電所を改修して開設にこぎつけたユニークなスペースだ。その後は無名アーティストたちの登竜門として、そして多様なアートや音楽・演劇・ダンスに気軽に触れるカルチャースポットとして市民たちに愛されてきた。この場所がシンガポールのアートシーンに与えた貢献と影響は計り知れない。
2000年に入って政府の文化振興政策により、各ミュージアムやパフォーミングアートセンター、アートやデザイン関連のフェスティバルなどが次々と計画され、現在は数多くの文化施設やイベントに溢れるシンガポール。国家主導の贅沢な施設やフェスティバルの傍らで、サブステーションは常に資金繰りに苦慮しながらも、意欲的な運営者たちによって活動を継続させてきた。この貴重な民間による民間のためのアートスポットの閉館を嘆き、惜しむ声は多い。論争はまだ続いているが、現在最後のフェスティバルが開催中だ。