『市民ケーン』の脚本家を描いたNetflixオリジナル映画『Mank/マンク』は、古くて新しい傑作!
コロナ禍で劇場公開が困難を極めるなかで、次々と良作を配信するNetflix。開催が4月へ延期されることが発表された2021年のアカデミー賞においても、ベネツィア映画祭で作品賞を受賞している『ノマドランド』やA24配給の『Minari』の対抗馬として、『シカゴ7裁判』『マ・レイニーのブラックボトム』などNeflixオリジナル作品のタイトルが挙がっています。
そのなかでも有力候補になりそうな作品が『Mank/マンク』。デヴィッド・フィンチャー監督が名作『市民ケーン』(1941年)の脚本家に光を当て、知られざる製作の裏側を描き出した作品です。主人公はオーソン・ウェルズが監督する『市民ケーン』の脚本を依頼された、脚本家のマンクことハーマン・J・マンキウィッツ。アルコール依存症で骨折中でもある彼は、タイピストと家政婦とともに貸別荘に送り込まれ、限られた期間のなかで脚本の執筆を始めます。
ケーンのモデルになった新聞王のハーストや彼の愛人で女優のマリオン、大手スタジオ「MGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)」の社長であるルイス・B・メイヤーをはじめとする、実在の人物たちが登場。30~40年代のハリウッドの舞台裏をそのまま覗き見しているかのような気持ちになれます。『市民ケーン』をあらかじめ観ていることは必須ですが、マンクが脚本を完成させるまでのプロセスと闘いを当時の映画のスタイルで描きだしているところに、この映画のオリジナリティがあります。
完璧主義者といわれるフィンチャーだけに、美術や衣装、セリフのテンポ感のみならず、40年代の映画の質感に近づけたモノクロ映像とモノラル録音、『市民ケーン』と同様に回想シーンをパズルのように組み込んだ作りなど、細部にまでこだわりが。
潤沢な予算と監督に自由に映画を撮らせる姿勢を持つNetflixだからこそ、製作が可能だった作品といえるかもしれません。反骨精神にあふれ、英雄的ではないマンクを演じたゲイリー・オールドマンをはじめ、キャストには豪華な役者陣が揃っています。州知事選についてのエピソードなど現代に通じるテーマも盛り込んだ、古くて新しい傑作といえそうです。
『Mank/マンク』
監督/デヴィッド・フィンチャー
出演/ゲイリー・オールドマン、アマンダ・セイフライド
2020年 アメリカ映画 2時間12分
シネ・リーブル池袋にて公開中。Netflixで独占配信中。
https://www.netflix.com/browse?jbv=81117189