PARISパリ
2020年のベスト・トイレは、これだ。
コロナウイルスの影響で生活様式がガラリと変わった2020年。時代が大きく変わっても、パリで悩みのタネとなり続けているのが、意外にも「立ちション」問題だ。68ユーロの罰金もあまり効き目がなく、人気デザイナーのパトリック・ジュアンがデザインした、市内に400以上ある公衆トイレ「サニゼット」を無料にしてもあまり効果がない。2年前には「ユニトロットワール」、今年2月には夜間だけ出現する「ユニリフト」と、新コンセプトのトイレが定期的に登場して話題になるが、なかなか大成功とはいかなかった。
そんななか、今年の夏に登場した「ナチュリノワール」は、エコロジーを前面に打ち出した“時代を象徴する”トイレだった。製造しているエコセックは、水を使わないドライトイレで農業用肥料を生み出すシステムを提案してきたスタートアップ協同組合で、これまでもツール・ド・フランスやサッカーW杯のなどのイベントに仮設トイレをレンタルしてきた実績がある。火山岩がアンモニア臭を取り去り、木製のストラクチャーに植えられた植物が尿の養分と水分を吸収、尿素をオーガニックな肥料に変えるシステムは、ソーラーパネルのエネルギーで稼働する。
水を節約し、電気を自給し、立ちション公害をオーガニック肥料に変えるというアイデアは、まさに、地球的な規模でエコロジーが問題になっているだけに大歓迎まちがいなし……と思いきや、設置から2週間ほどで不具合が。日当たりが悪いせいでソーラーシステムが上手く稼働せず、ポンプが動かないという珍事件が起きた。トイレは早速日当たりの良い場所に移動されたが、とにかく今年もっともインパクトのあるトイレだったことは間違いない。