「もっと、もっと」の考え方を改め、 負のスパイラルから抜け出すべき。

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    Takeshi Kobayashi
    1959年山形県生まれ。音楽家。2003年に「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進や、野外イベントを開催。19年には循環型ファーム&パーク「KURKKU FIELDS」をオープン。震災後10年目の今年、櫻井和寿、MISIAとの新曲を発表。宮城県石巻市を中心に発信するアートイベント「Reborn-Art Festival」も主催している。
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    【魚の乱獲】
    OVER FISHING
    「ap bank」などの活動を通して環境問題に向き合うなど、サステイナブルな社会について考え、行動してきた小林武史さん。その目に、サステイナブルの行方はどう映っているのか。連載14回目のテーマは「魚の乱獲」。日本近海には約4000種類の魚介類が生息し、400種類を食べてきたといわれている。この世界一豊かな漁場といわれていた日本で海洋資源量の減少が起こっている。近年は限られた資源を持続的に活用していくため、料理人も声を上げ始めた。「シンシア」の石井真介さんや「鰻 はし本」の橋本正平さんらは佐々木ひろこさんを代表とする「シェフス・フォー・ザ・ブルー」という団体で活動しながらサステイナブルなシーフードを考え、発信する。「食べることは生き方につながる。そこから未来を語るのはとても有効なこと」と小林さんは言う。

    「もっと、もっと」の考え方を改め、 負のスパイラルから抜け出すべき。

    森本千絵(goen°)・絵 監修 illustration supervised by Chie Morimoto
    オクダ サトシ(goen°)・絵 illustration by Satoshi Okuda
    小久保敦郎(サグレス)・構成 composed by Atsuo Kokubo

    先日、海洋資源の減少について改めて話を聞く機会がありました。日本人が大好きな「本マグロ(太平洋クロマグロ)」は、本来あるはずの資源量に対して、わずか4%程度しか残っていないそうです。ウナギも絶滅寸前。スルメイカの漁獲量も激減している。総漁獲量は、ピーク時の3分の1。漁業者は減り、漁業を取りまくコミュニティも崩壊の危機に面しているといいます。

    なぜ魚が減ったのか。地球の温暖化や海洋汚染など理由はありますが、特に影響しているのが乱獲だといわれます。これまで日本では漁獲制限が緩く、魚は獲り放題に近かったようです。稚魚まで獲ってしまう。でもここにきてようやく漁業法が改正され、部分的な漁獲制限が始まりました。これは、ひとつの光明。大西洋クロマグロのように、漁獲制限により資源量が回復した実績があるからです。

    消費者の目線から、一例としてマグロについて考えてみました。寿司や刺し身にするとマグロは存在感があるし、それがなければ成り立たない雰囲気すらあります。不動の四番打者のようになっている。でも、なんで不動なの? と思うことがあります。僕はお好みで寿司を食べる時、マグロはあまり頼みません。他に気になるタネがたくさんあるから。僕の中ではマグロよりも近海で獲れた魚のほうがプライオリティは高い。その時期、その土地での一期一会があるので。もちろん食べてみると「あれ?」と思うことはあります。一方で、とびきりの魚に出合ったりもする。それが本当に楽しいんです。マグロは確かにおいしい。でも、マグロ一辺倒でそれが当たり前になっていて、食べ続けることに疑問を感じていないのではないか。その姿勢には、どこか違和感を覚えてしまいます。

    これまで漁業者が魚を獲れるだけ獲ってきたという背景には、なにがあるのか。魚を安く食べたい消費者がいて、ならばと安く売りたい流通業者がいて、その結果薄利多売となり、たくさん獲らなくては生活ができない漁業者がいる。消費者からつながる、負のスパイラルです。誰もやめようと言えない状態になっているのは、なんとかしなくてはいけない。「もっと、もっと」というのをやめるのもそうですし、既にそれぞれのあり方自体を見直さなければいけないところまで来ているとも感じています。