映画『レオン』の主人公たちが身に着けた、アイコニックなファッション
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一第2回 プレーントゥのドクターマーチン
『レオン』は、リュック・ベッソンが1994年に監督したフランスとアメリカの合作映画だ。『サブウェイ』(84年)、『グラン・ブルー』(88年)、『ニキータ』(90年)とヨーロッパを拠点に次々とヒット作を連発したフランス出身のベッソンが、初めてアメリカのニューヨークを舞台に製作した映画である。
“掃除人”と自らを呼ぶイタリア系移民の殺し屋レオン(ジャン・レノ)と、アパートの隣室に住み、悪徳警官らに家族を無残に殺されてしまった美少女マチルダ(ナタリー・ポートマン)との純愛を描いた作品。のちに『スター・ウォーズ』シリーズや『ブラック・スワン』(2010年)などで有名になるポートマンにとってのデビュー作で、撮影した時は、まだ12歳(13歳という説も)。都会の片隅に生きる孤独なレオンを相手に映画史上に残るヒロインを演じる。悪徳警官スタンフィールド役のゲーリー・オールドマンの狂気的な演技も見物で、後半のレオンと警官隊とのヒリヒリするようなやりとりで緊張感が高まっていく筋立て。エンディングに流れるスティングの『Shape of My Heart』が心に沁みる。何度観ても感動を覚える、時代を超越するスタンダードな映画だ。
今回はこの『レオン』から、ストイックなスタイルを崩さない主人公と、彼に憧れる小悪魔的な美少女、マチルダが身に着けていた名品について解説しよう。
90年代に発表された『レオン』だが、主人公のストイックなスタイルはいまに通じるものがある。
レオンはウールのシングルコートに、パンツをやや短めに履き、革靴はシンプルなプレーントゥを合わせる。そして靴下は常に真っ白。くるぶしを見せてパンツを履く着こなしや、白の靴下を選ぶ手法は、“いま”を感じる。
レオンが履くプレーントゥは、どんなデザインだろうかと画面を凝視していると、後半になって靴が大きく映るシーンがあった。弟を殺した刑事スタンフィールを追って警察に向かったマチルダが逆に拘束されてしまい、レオンが警察を襲撃し、マチルダの救出に成功する。この場面でレオンの足元がアップになるのだが、独特のエアクッションソールを備えた英国のドクターマーチンのように見える。さらに、シューホールからソール、ウェルトステッチまで同色のため、これは同ブランドで「1461 MONO 3EYE SHOE」に酷似していた。
このモデルは1961年の4月1日に誕生したことが名前の由来で、アッパーにソフトなスムースレザーを採用した3アイレットのベーシックなプレーントゥ。ブランドのアイコン的な存在として英国だけでなく、多くの人に長く愛用されてきた。一色ですべてを統一したシンプルさが、ストイックなレオンに似合っていた。
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